研究課題/領域番号 |
18K03435
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
丸野 健一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80380674)
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研究分担者 |
太田 泰広 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10213745)
筧 三郎 立教大学, 理学部, 教授 (60318798)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 応用可積分系 / ソリトン / 可積分アルゴリズム / 2次元波動パターン / パフィアン / 自己適合移動格子スキーム / 三角形分割 / 離散微分幾何 |
研究実績の概要 |
可積分系の研究において見出された離散数理構造を積極的に用いて複雑な波動現象解明のための革新的な計算手法を開発することを目標として研究を行なった。具体的には、(1) 離散可積分系研究で見出された手法を基盤とした高精度で高速な構造保存型差分スキームの開発およびその数理的性質の研究、(2) 2次元波動パターンのある時刻における情報からそのパターンを生成する厳密解を構成し波動パターンの時間発展を予測する計算アルゴリズムの開発に取り組んだ。(1)においては離散可積分系の手法とともに離散微分幾何学の手法を積極的に用いて、申請者らが提案した自己適合移動格子スキームの研究、開発を中心に行なった。いくつかの物理現象の数理モデルに対して自己適合移動格子スキームの構築と精度検証を行なった。また、離散微分幾何学的アプローチを用いて離散空間曲線の運動から渦糸の運動を記述する複素WKI方程式の自己適合移動格子スキームの構築に取り組んだ。この結果については現在論文を執筆中であり国際査読論文誌に投稿予定である。(2)においては、2次元可積分系理論を基盤としてコード図、ネットワーク図、三角形分割などの組み合わせ論や計算幾何学の手法を積極的に用いて2次元非線形波動方程式の分類問題に取り組んだ。特に、DKP(結合型KP)方程式、Davey-Stewartson方程式のソリトンが作るパターンの分類手法の開発に取り組み、ネットワーク図、コード図の拡張にたどり着いた。またこれまで困難であったBKP方程式のソリトンパターンの研究についても前進があった。現在、これらの成果をまとめて論文を執筆中で国際査読論文誌に投稿予定である。 離散可積分系の国際会議「Symmetries and Integrability of Difference Equations」を11月に福岡で開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理学において現れるいくつかの数理モデルについて自己適合移動格子スキームの構築を行いそれらの数値計算精度を詳しく検証し、自己適合移動格子スキームが信頼できる数値計算法であることが確認できた。また,自己適合移動格子スキームの幾何学的構築の方法についての研究も大きく前進した。2次元波動パターンの研究については、DKP方程式とDavey-Stwartson方程式のソリトンパターンの分類問題に対する解析手法として、ネットワーク図、コード図の拡張にたどり着くことができた。7月(台湾)と3月(アメリカ)の国際会議でこれらの成果を発表したところ好評であった。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
自己適合移動格子スキームの適用範囲をさらに広げるため、様々なタイプの非線形偏微分方程式に対して自己適合移動格子スキームの構築を行い、自己適合移動格子スキームの数値計算において扱える範囲を広げ計算精度の検証を行うことで、実用的な数値計算法として確立することを目指す。また、離散微分幾何学とのつながりをさらに深く追求することで離散微分幾何的アプローチの数値計算への応用について研究していく予定である。2次元ソリトンパターンの問題については、本研究課題に取り組んでいく中で拡張されたネットワーク図などの新たな道具や組合せ論的手法を使ってこれまで解析が困難であったDKP方程式やBKP方程式のソリトンパターンの分類問題および逆問題の解析に取り組んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、参加を予定していた学会、研究会に学内業務のため参加できなくなった、招聘を予定していた共同研究者が来れなくなった、必要な消耗品は大学の研究費で購入することができたなどのため次年度使用額が生じた。次年度使用額は国際会議や学会での研究成果発表のための旅費や共同研究者の招聘旅費等に使用する予定である。
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