研究課題
本研究課題では拡散および異常拡散方程式に対する代用電荷法(基本解近似解法)の適用について研究を進めた。研究の初期には時間-空間に均等に時間依存基本解の特異点を配置し、その線形和により近似解を構成するnaiveな方法について、その特性を数値的に検証した。結果として、空間に対する離散化に対しては良好な結果が得られたものの、時間に対してはその刻みを小さくすると不安定を生じるという問題点が発生した。理論解析を行ったところ、これはnaiveな方法を適用する際には避けられない問題であり、時間に対する離散化の方法について再検討する必要に迫られた。検討の結果、近似解を時間方向について積分形で記述し、これをConvolution Quadrature Method(以下CQM) により離散化すると安定性改善の可能性があることを見いだした。令和4年度にはCQMのうち陰的線型多段法を適用した手法を開発し、数値実験による検討の結果、安定な数値解が得られることがわかった。この成果は令和5年度に実施された学会・セミナーにおいて発表した。しかしこの手法では、近似解の誤差の減少のオーダーは時間刻み△tに対し、O(△t)程度のものしか得られなかった。令和5年度は令和4年度に得られた結果を拡張し、陰的Runge-Kutta法を利用したCQMを適用した手法について検討を行った。陰的Runge-Kutta法としては2段3次の公式であるRadau IIA法を適用した。その結果、通常の拡散方程式および時間微分階数が1/2以上の異常拡散方程式に対しては、近似解の誤差の減少のオーダーが△tの2次もしくは3次である結果が得られた。しかし時間微分階数が1/2を下回るものについては、陰的線型多段法より精度は高いものの誤差の減少はO(△t)程度にとどまった。今後はこの現象の原因について検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Practical Inverse Problems and Their Prospects, Mathematics for Industry
巻: 37 ページ: 247-261
10.1007/978-981-99-2408-0_15