研究課題/領域番号 |
18K03439
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
大田 靖 岡山理科大学, 経営学部, 准教授 (50536555)
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研究分担者 |
鍛治 俊輔 名城大学, 理工学部, 准教授 (10467524)
津田 博史 同志社大学, 理工学部, 教授 (90450163)
大江 貴司 岡山理科大学, 理学部, 教授 (90258210)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Inverse Problems / Finance Markets / Bayesian Approach |
研究実績の概要 |
本年度は,本研究課題の後半部分の目標である,トレンド係数の逆推定の問題に主に取り組んだ.その中で,特にベイズ推定の手法を用いたトレンド係数,及びボラティリティ係数の同時推定の問題に取り組み,限定された条件であるが,数値計算の手法を用いた同時推定に成功した.特に,本研究における提案手法は,初期値に関する依存性が,ニュートン法に代表されるレーベンバーグ・マルカート法に比べて低いことが示され,さらに実務的にみても十分応用可能であることが示された.得られた成果をまとめ,国際雑誌"International Journal of Computer Mathematics"に投稿し,採択され掲載されている.さらに,それらの成果を通常のブラック・ショールズモデルに適用し,実データを用いた推定を行い,ボラティリティスマイルの検出に成功した.これらの結果をまとめ,現在国際ジャーナルに投稿している.また,実務への本研究成果の還元をより意識し,バイナリーオプションに関する研究を進め,2本の研究論文を投稿している.さらに,市場における株価やオプション価格の高頻度データを利用し,トレンドやボラティリティを再構成することを試み,現在1本の論文を投稿中である. 次年度は,今年度以上に実務への還元を意識し,実データの活用を積極的に行う予定である.特に,応用家・実務家との相互交流を深め,現場での実証分析を通して技術の限界を見極め,それに応じた理論モデルの修正を繰り返し行うことを計画している.なお,本研究課題に関連して以下の国際会議において招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 昨年度に引き続き,本年度においても当該研究の論文が国際ジャーナルに採択され,さらに関連論文として,5つの研究論文を投稿できたことは当初の予定より進んでいると評価される.また,ベイズ推定の手法の応用への汎用性が当初予測していいた以上に高く,当該研究がより広範囲のテーマを対象とすることが可能となったことが研究の進捗状況が順調である最大の要因である.また,本年度において,2つの国際会議で発表することができ,その際に今後の研究において指針となる指摘が得られたことも研究が順調に進んでいる要因となっている.また,当該研究に深く関連した,新たな共同研究者との研究テーマに取り組み,それらの結果を論文としてまとめ,現在投稿段階にあることも要因としてあげられる.これらのことより,本研究は,当初の予定通り順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
1.前年度に引き続きLipschitz安定性評価式の導出を検討する.また,金利のモデルに関して,同様な安定性の条件を導出できるかを検討すことも研究テーマとする. 2.本年度は,ベイズ推定の手法(MCMC-MH法等)などの統計的な手法を金融の逆問題のモデルに適用し,ボラティリティやトレンドの推定に関する研究成果が複数得られた.今後は,これらの成果を実データまで拡張し,本研究成果の実務への還元を目標とする. 3.当該研究の成果を用いて実証分析を行うメリットは,市場のオプション価格や企業価値などの実務的なデータから,乖離を最小限に抑えながら株式や企業の変動率(ボラティリティ)や期待収益率(トレンド)などを逆推定できることにある.本年度においては,昨年度に引き続きこれらの逆推定を高頻度データ使用して行うことを計画している.また,応用家・実務家との相互交流をより一層深め,実務で利用可能な理論モデルの提案・修正を繰り返し行うことを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた北海道大学での研究打ち合わせが、移動自粛の関係で開催不可となり、その計上分の国内旅費が未使用となったため、次年度使用額が生じた。次年度は、本年度の繰り越し分を考慮し、未開催の研究打ち合わせ等を行う予定である。また、研究の進捗にあわせて数値計算のソフトウェアが必要となったため、次年度に新たに計上することを計画している。
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