研究課題/領域番号 |
18K03440
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研究機関 | 中村学園大学短期大学部 |
研究代表者 |
橋本 弘治 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 准教授 (40455093)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発展方程式 / 有限要素法 / 構成的誤差評価 |
研究実績の概要 |
本年度は研究の骨格の構築に取り組んだ。初めに、熱方程式に対する全離散有限要素法の構成的誤差評価を開発した。次に、発展方程式の初期値問題を初期値ゼロの非線形部分と右辺ゼロの初期値部分に分けて考え、前者には正定値性を利用した評価(次年度以降は発展作用素を用いる予定であり、今年度の結果は簡易発展作用素を用いた評価の位置づけとなる。)、後者にはNakao法を用いた数値的検証法を適用した。その結果、安定定常解がゼロ解となる場合(Fujita型方程式)では低計算コストでかつ高精度にて解軌道を捉えることに成功した。また、安定定常解がゼロ解ではない場合(Allen-Cahn方程式)においても安定定常解に十分近い近傍までの解軌道を捉えることに成功した。但し、この場合は前者と異なり累積誤差を回避するところまでは至らなかった。この問題については関係研究者との議論を通して発展作用素として考えることが最善であることがわかり、数値計算により発展作用素の有用性の実証まで行っている。また、この中で方程式として発展する際に発展作用素の固有値挙動が想定していなかった非常に興味深い挙動となることがわかった。初期値付近では整合性条件のねじれ(のようなもの)の調整部分と上下(左右)への発展部分との境目では固有値挙動に急激な変化が起こり、それが発展の原動力となっていると予想できるものであり、これまで行われていなかった本研究で行っているような全離散有限要素法(時間方向にも近似理論を適用する考え方)を用いた数値的検証法が発展方程式に適した手法であることが実証できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発展方程式の初期値問題に対する数値敵的検証法において最も重要となる熱方程式に対する全離散有限要素法の構成的誤差評価は完成し、成果物として日本応用数理学会英文誌(JJIAM)への掲載が決定した。また、非線形問題への適用としてFujita型方程式とAllen-Cahn方程式において予想以上の検証結果を得ることができた。特に、Allen-Cahn方程式は特異摂動問題であり、このような問題への検証例は理論的にも数値的にも発表されておらず、本研究にて提案している手法の優位性と考えている。この結果についてはプレプリントとして発表している。また、累積誤差の回避についても発展作用素を用いることで大幅に改善されることが予想される数値結果が得られており、予定通り研究を完了することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始前には非常に難しいと考えていた累積誤差の制御について、関係研究者との議論により発展作用素を用いることで大幅に改善される見通しとなった。また、数値結果から発展作用素の固有値挙動が初期値付近とそれ以降で急激な変化が起こることが分かり、この現象に対応できる手法として、本研究の提案手法の優位性が予想以上に高いことが期待される。よって、次年度以降は現在数値例としているAllen-Cahn方程式に対して発展作用素とNakao法を組み合わせた数値的検証アルゴリズムの実証、および、より難易度の高いBurgers方程式に対する数値的検証アルゴリズムの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度日本で開催される国際会議にて研究成果の発表を予定していたが次年度に海外で行われる国際会議(ICIAM2019)にて発表することことに変更したため
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