研究課題
本研究の2つの大きなテーマは、1.高い対称性をもつHubbard模型の基底状態、2.相互作用するマヨラナ・フェルミオン系とその応用、である。当該年度の主な結果として、以下の3つに関するものが挙げられる。(1)SU(N) Hubbard模型・近藤格子模型についての厳密な結果、(2)非エルミートなフェルミオン2次形式のジョルダン分解、(3)量子多体傷跡状態をもつ模型の構成。(1)SU(2) Hubbard模型については、平坦バンド強磁性(1粒子基底状態の縮退度と電子数が等しい場合に多体の基底状態が強磁性となること)の必要十分条件が知られていたが、この結果をSU(N) Hubbard模型に拡張した。さらにこの結果を応用して、SU(N) 近藤格子系についても平坦バンド強磁性の一般論を展開した。さらに伏見カクタスなどのグラフ上のSU(N) Hubbard模型において、SU(N)シングレット状態が基底状態となる模型を系統的に構成した。(2)非エルミートなフェルミオン2次形式のジョルダン分解についての予想[T. Prosen, J. Stat. Mech. P07020 (2010)]を厳密に証明した。この結果は、多体の散逸系や片方向Hatano-Nelson模型などへの応用が可能である。(3)スカラースピンカイラリティなどの多スピン相互作用を含む模型で、量子多体傷跡状態をもつものを系統的に構成する手法を提案した。研究期間全体を通しては、上述のテーマについて多くの結果を得ることができた。特に散逸のある量子多体系のマヨラナフェルミオンを用いた厳密解、量子多体傷跡状態の代数的構成法についての論文は、最近では標準的な文献として多数引用されている。また、SU(N) 引力Hubbard模型におけるマヨラナ鏡映正値性の応用など、既存の研究の延長にない本質的に新しい成果を得ることもできた。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 17件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Physical Review Research
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http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/hkatsura-lab/