研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が近年進めて来た開放進化系の複雑性-頑健性関係(T. Shimada, SREP 4, (2014) 4082. 等)についての理論研究を発展させ、また社会系や土壌微生物群衆系などの現実系の解析への展開に挑戦してきた。
本来最終年度と計画していた2020年度には、新たな土壌実験の実施によるデータの取得と海外渡航を伴う共同研究とが COVID-19 感染拡大状況下で不可能になったため、本研究の実施期間を1年延長した。これにより最終年度となった本年度は、入念な計画のもと海外での短期滞在共同研究と国際学会での成果発表を実施し、これにより下記2つの研究課題を中心とした研究のまとめと、現況下でより貴重となっていた成果の周知をおおむね本来計画していた程度に行うことができた。 まず、社会系を対象にしての展開として進めてきた「Wikipedia の編集関係ネットワークの解析」の研究のまとめを行った。この研究では生態系の理論で議論されて来たネットワーク構造の分析を行い、更に自己無撞着な形で定義される記事と著者の重要性指標を提案することにより、その指標の記事の特徴づけに有用であることを示した。これらの成果については査読と改訂を経て学術論文誌として出版した。 また、新たな土壌実験の実施によるデータの取得については COVID-19 感染拡大に伴い困難な状況が続いたため断念したが、一方で社会系へのもうひとつの展開として、間接的互恵性に基づく協力関係の時間変化ダイナミクスについての理論研究をまとめこれも学術論文として出版した。 また、本研究計画による開放進化系の複雑性-頑健性についての進展のまとめと、上記の Wikipedia の構造の研究についてはそれぞれ日本語での解説記事も出版した。
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