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2020 年度 実施状況報告書

マクロ量子系における状態間遷移の時間効率

研究課題

研究課題/領域番号 18K03454
研究機関静岡大学

研究代表者

弓削 達郎  静岡大学, 理学部, 助教 (70547380)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード量子マスター方程式 / 共振器量子電磁気学 / ファノ効果
研究実績の概要

共振器量子電磁気学系においてファノ効果の影響を取り入れた量子マスター方程式の定式化を行った。この系におけるファノ効果は、量子エミッタ(二準位系)からの直接発光と共振器モードを介した発光との干渉によって起こるもので、今回の定式化では量子マスター方程式にこの干渉効果に対応する緩和項を(通常の自然放出と共振器損失に対応する緩和項に加えて)取り入れた。
この量子マスター方程式を用いて、ファノ効果がある場合の共振器量子電磁気学系における緩和レートの計算を行った。共振器モードと量子エミッタの振動数の差(離調)の関数として緩和レートをプロットすると、ファノ効果に特有の非対称な形状が現れることを示した。特に、破壊的干渉が起こる領域では、緩和レートがゼロに近くなる、つまり緩和時間が非常に長くなることが分かった。
さらに、発光スペクトルに対するファノ効果の影響を調べた。その結果特に、ファノ効果による緩和と通常の緩和に加えて純位相緩和も取り入れた場合に、破壊的干渉が起こる領域で共振器モードの振動数での発光のみが強く起き、量子エミッタの振動数での発光はほぼゼロとなることを見出した。このことは、通常予想される位相緩和による干渉効果の消失は起きず、位相緩和があったとしてもファノ効果による破壊的干渉は頑健であることを意味している。この頑健性の理由は、位相緩和をもたらす位相ゆらぎが量子エミッタからの直接発光と共振器モードを介した発光とで同じゆらぎ方をするために、これらの干渉には位相ゆらぎの影響が実質的にはないためであると理解できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウイルス感染症の影響により、研究時間を十分に確保することが難しかった。

今後の研究の推進方策

閉じた系における熱平衡化が開放系になったことによってどのような影響を受けるのかを調べる。量子マスター方程式による問題の定式化を行い、斜め磁場イジングモデルなどの具体的なモデルについて数値計算を行って緩和時間の評価を行う。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響により出張の機会がなくなったため、旅費の使用がなかった。
数値計算のための計算機の購入および整備に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Theory of Fano effect in cavity quantum electrodynamics2021

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi Makoto、Lyasota Alexey、Yuge Tatsuro
    • 雑誌名

      Physical Review Research

      巻: 3 ページ: 013037-1/14

    • DOI

      10.1103/PhysRevResearch.3.013037

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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