研究課題/領域番号 |
18K03460
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高根 美武 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40254388)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ディラック方程式 |
研究実績の概要 |
今年度は,本研究の核として構想していた課題を遂行した.螺旋転位を含む有限サイズのワイル半金属に補助方程式の方法(ワイル方程式と補助方程式を連立させて準粒子状態を求める方法)を適用し,カイラルな準粒子状態の解析的な記述に成功した.さらに,その結果に基づいて永久電流の解析的な表式を導出した.格子モデルに基づく数値計算結果と比較したところ良い一致が得られた.これらの結果を一編の論文として出版し,さらにこの成果に関する総説を日本語で発表した.この研究を通して,ワイル半金属の2次元的なカイラル表面状態や,螺旋転位の周囲に現れる1次元的なカイラル状態の性質を明らかにすることができた.これらの解析は単純なワイル方程式の枠内では不可能であり,補助方程式の方法の有用性を如実に示す成果と言える. さらに当初予定していなかった課題を二つ遂行した.一つ目は2次元の2次トポロジカル絶縁体の角状態に関する研究である.90度と270度の複数の角によって構成される入り組んだ境界端をもつ2次トポロジカル絶縁体の角状態の波動関数を数値的に求める方法を定式化し,幾つかの場合について角状態の波動関数を具体的に求めた.この結果を一編の論文として発表した.二つ目は非エルミートなトポロジカル絶縁体におけるバルク‐境界対応に関する研究である.従来,「境界の無いバルク系におけるトポロジカル数」と「境界のある系における境界状態の出現」が一対一で対応することが知られていたが,非エルミート系ではこの対応関係が破れてしまう.このバルク‐境界対応の破れを回復する処方箋を提案した.この結果も一編の論文として発表済である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた研究課題をほぼ遂行し,論文として発表した.また,予定していなかった発展的課題についても論文を出版した.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究課題をほぼ遂行できたので,将来性の見込める発展的な課題(非エルミート・ディラック系)に関する研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で物理学会の現地開催が中止されたうえに,予定していた共同研究のための打ち合わせ等も実施できなくなったため旅費が執行できず,そのため次年度使用額が生じた.今年度も学会や国際会議の開催は不確定要素が大きいので,主としてソフトウエアや計算機等の購入に充当する予定である.2020年度は非エルミート・ディラック系の研究に集中する予定なので,大規模な非エルミート行列の取り扱いに適した計算機環境を整備する.
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