ワイル半金属のバルクな電子状態はワイル方程式(質量ゼロのディラック方程式)によって記述され,波数空間において円錐状のエネルギー分散を示す.しかしこの物質の顕著な特徴と見なされる,表面に局在した2次元的カイラル状態や螺旋転位に沿って現れる1次元的カイラル状態はワイル方程式によって記述できない.本研究では,ワイル方程式から零れ落ちた情報を補助方程式によって補えば,これらのカイラル状態を適切に記述できることを示し,ワイル方程式だけでは不充分な理由を明らかにした. ワイル半金属はワイル方程式によって記述できると理解されている.本研究はこの広く定着した理解が孕む本質的な問題を明らかにしたものと言える.
|