研究課題/領域番号 |
18K03467
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
門内 隆明 成蹊大学, 理工学部, 講師 (30514476)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 孤立量子系 / 非平衡統計力学 |
研究実績の概要 |
孤立量子系における非平衡統計力学の構築や量子情報量の操作的な解析について取り組んだ。
熱平衡化は、最も基本的な非平衡過程の一つであり、一方でそのメカニズムの解明は重要未解決問題である。これについて、孤立量子可積分系は、非自明な保存量の組で特徴づけられる一般化Gibbs ensemble(GGE)に緩和すると考えられている。 そこで、GGEに緩和する条件とメカニズムを、空間一様系の熱力学極限においてハミルトニアンが2次形式の場合に局所性やmixingの観点から明らかにした。特に、相関関数のクラスター性、局所物理量への限定、初期非平衡状態のクラスについて局所性を要請することで、多くの初期状態について各モードの励起数を最大化するようなGGEへの緩和が起こることを時間発展ダイナミクスの解析から示した。相関関数が並進対称成分を含まない場合には、mixingに基づく初等的な導出が可能である。更に、量子ドット系と熱浴が相互作用する場合や、系と熱浴からなる全系の初期状態がentangleしている場合にも拡張した。これらの内容について、論文を公刊した。また、アルゼンチンにおける国際会議StatPhys 27やポルトガルにおけるWorkshopにおいて発表を行った。
また、量子状態のentanglementは、量子情報論において最も基礎的な量の一つであり、これを測定することは一般に重要である。一方、entanglementは状態量であり、その測定は非自明である。そこで、純粋状態のentanglementを不等式評価し、射影測定による測定値とSchmidt係数の間の関連を明らかにした。これについて、論文を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、孤立量子系における非平衡統計力学の重要テーマである熱平衡化について、様々な角度から取り組んできている。 初年度は、量子非可積分系における固有状態熱化仮説の成立のシナリオを示した。 本年度は、量子可積分系における一般化Gibbs ensembleへの緩和について、厳密な結果を得た。 また、entanglementの推定問題についても、一般的な射影測定を用いた不等式を示した。 これは、物理量の選択、局所性、squeezing等を用いた非平衡初期状態の用意という理論の操作的な側面を充実させることにも繋がった。 そして、論文を公刊するだけでなく、アルゼンチンおよびポルトガルにおける国際会議で発表し、議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、孤立量子系における非平衡統計力学について取り組んで行く。特に、継続して操作的な観点の充実、関連分野におけるディスカッションの活性化を通じて、理論を構築する。
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