研究課題/領域番号 |
18K03470
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
湯浅 一哉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90339721)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子制御 / 量子測定 / 量子操作 / 量子Zeno効果 / 量子断熱定理 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,「量子測定」と「量子制御」をキーワードに,それらが意外ながら本質的な役割を果たすテーマに取り組んで,「量子情報技術」や「統計力学の基礎」に貢献することにある.「量子計測」,「測定による量子制御」,「統計力学の基礎」を柱に研究を推進しており,第3年度の今年度は以下の成果を得た. ■量子測定によって系の時間発展を変化させ制御する「量子Zeno効果」の研究を進めている.量子Zeno効果は,(i)量子測定を繰り返す代わりに(ii)ユニタリー操作の繰り返しによっても引き起こすことができ(パルス制御),また,(iii)強い外場の連続的印加や(iv)強い緩和過程にさらすことでも発現できる(連続制御).前年度に連続制御(iii)と(iv)の一般化と統合に成功したが,本年度はパルス制御(i)と(ii)に取り組み,論文発表した.一般的なMarkov過程を示す量子開放系に対し量子測定やユニタリー操作に限らない一般的な量子操作の頻繁な繰り返しで量子Zeno効果が生じることを示した.その証明は連続制御(iii)と(iv)を一般化し統合した証明手法によっており,(i)-(iv)の全てを統一的に扱える枠組みを構築した研究となっている. ■量子Zeno効果を含む様々な量子制御手法が「量子断熱定理」に基づいていることを認識し,量子断熱定理の一般化と深化に取り組み始めた.本年度は,上記の量子Zeno効果(iii)と(iv)を支える量子断熱定理の発展を図った.標準的な量子断熱定理はユニタリー過程を対象としており,また,有限時間内でしか成立しないものであったが,本年度の研究で,定常Markov過程としては一般の量子開放系の時間発展を扱えるように一般化するとともに,量子断熱定理が任意の長時間にわたって成立することを示し,しかも,断熱性の度合いを明示的に評価することに成功して,その成果を論文発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で研究活動が大幅な制約を受け,例年のように研究活動を展開することができなかった.それでも,おおむね当初計画したテーマで研究を遂行し,第3年度の今年度は2編の論文を発表するとともに,1件の国際会議発表,5件の国内学会・研究会発表に結実した.さらに,年度内に投稿した1編の論文が新年度に掲載決定となっており,順調に成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が依然として続いており,次年度も例年のように研究を展開できるかどうか不透明な状況である.幸い理論的な研究のため,当初計画した研究内容に関して最低限度の研究は遂行できると考えており,引き続き「量子計測」,「測定による量子制御」,「統計力学の基礎」の3つのテーマを柱に研究を推進する.このような状況にあっても効果的に研究を展開できるように努めていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で研究出張や学会出張をできる状況になかった.次年度以降に社会情勢が改善し,例年のように研究活動を展開できる状況になったところで有効に使用することが効果的であると判断した.出張旅費に加算して支出したいと考えている.
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