研究課題/領域番号 |
18K03472
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
笠松 健一 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70413763)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 冷却原子 / 光格子 / 双極子相互作用 / 量子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は、レーザー光によって作られた光格子ポテンシャル中の双極子型の長距離相互作用を有する冷却極性原子気体の系において、動的に束縛状態を形成する隣接サイト二量体(ダイマー)と自由な一量体(シングロン)の共存系の量子ダイナミクスを数値計算により調べた。双極子相互作用は粒子間距離の3乗に反比例して減少するために、通常では隣接サイトよりも粒子が離れるとその効果はほとんど無視できると考えられるが、ダイマーはその有効質量が重くなり、隣接サイトへのホッピングレートが大きく減少するために、双極子力の影響がより遠距離でも顕著になることを見出した。例えば、ダイマーが複数存在する場合、系にランダムネスがないにもかかわらず、多体波動関数が局在化する傾向が強くなる。また、相互作用の大きさが弱くても、超流動成分の原子気体がポテンシャルがないにもかかわらず膨張しない自己束縛液滴状態を構成することを明らかにした。 その他、量子ダイナミクスを研究する手法として、切断ウィグナー法を用いた1次元量子ソリトンのダイナミクスや、平均場グッツヴィラー近似の枠内でトラップ系における超流動-Mott転移のクエンチダイナミクスをシミュレートすることで、非一様系キッブル・ズーレク機構との対応関係を議論した。冷却原子における超流動流体力学の研究としては、ラビ結合した2成分ボース凝縮体における相対位相のドメインウォールの不安定性を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極性原子気体のダイナミクスに関してはライプニッツ大学の量子光学研究室との共同研究により、2019年1月に論文を完成し投稿した。また、本研究室でも量子多体系を研究するための準備が進んでおり、計算するためのコードの開発や、情報収集、大学院生の教育による人材育成も着々と進行している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は現在得られている成果を論文にまとめて、物理学会や国際会議等で発表する予定である。極性気体の非平衡ダイナミクスに関しては、ノイズがあるときの量子ウォークとの議論との対応関係があることが判明しているので、その解析を進めて論文を執筆する。また同様のハミルトニアンを用いた系における平衡統計力学を議論する試みを韓国の基礎科学研究院の研究者との共同研究により完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金の内、60000円程度は3月の出張旅費としてすでに使用済みである。そのほかの残金は現在執筆中の論文の完成に時間がかかっており、その英文校正に使用する予定である。
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