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2022 年度 実施状況報告書

単ショットの反射電子回折強度分布から表面原子配列変化を決定する方法論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K03483
研究機関東京電機大学

研究代表者

川村 隆明  東京電機大学, 工学部, 研究員 (20111776)

研究分担者 小倉 正平  東京電機大学, 工学部, 准教授 (10396905)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2024-03-31
キーワード反射高速電子回折 / 単ショット電子回折 / 表面水素原子配列 / 位相回復法 / 動的過程
研究実績の概要

単ショットの反射電子回折(RHEED) 強度分布から表面原子配列を決める方法論の開発を目的とする本研究では、単ショットRHEED強度分布データ取得前後の表面原子配列を高精度に決定しておくことを前提としている。このため、2つのプロジェクト、1)単ショットのRHEED強度分布から表面原子配列変化を決める方法論の開発と、2)それに必要となる静的結晶表面の高精度原子配列解析法の開発を設定し、並行して研究を進めてきた。
1)については、昨年度までに開発した方法の改良に加え、単ショット強度分布取得前後の静的結晶表面の高精度原子配列解析で得られる、2つ以上の位相情報を利用すると、単ショット強度分布からの位相情報が回復でき、表面原子配列を決定できることを明らかにした。また昨年度から継続して、注目する原子位置に敏感な条件を利用する新たな方法論について検討した。
2)については、静的な表面について高精度に原子配列決定を可能とする条件の検討を行い、原子配列に敏感な条件を利用すること、またこの条件は注目する原子配列ごとに決めることが有効であることを明らかにした。具体的には、前年度から継続して、これまで困難とされてきたパラジウムPd(100)表面上の水素(H)位置に敏感な条件を見出した。また、より大きな分子の吸着系として、Ni(111)表面上のアセチレン(C2H2)中の水素(H)位置についても敏感な条件を見出した。これは今後、アセチレン以外の、水素を構成原子として含む分子が表面吸着した場合に、その分子中の水素の位置決定に役立つものであり、多くの応用が期待される。
研究成果に関して、学術雑誌に論文2件、国内での国際会議で講演1件、国内学会で講演1件を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の2つのプロジェクト、1)単ショットのRHEED強度分布から表面原子配列決定法の開発、2)静的結晶表面の高精度原子配列解析法の開発は予定通りに進み、当初予定していた方法論の開発ができた。これらの研究成果について、学術雑誌、国際会議、国内学会で発表した。これに加え、以下の2つの成果を得た。
1)注目する原子配列に敏感な条件を利用する方法論。研究の結果、注目する表面原子を最も軽元素である水素とした場合でも、その位置に敏感な条件を利用することで、単ショットRHEED強度分布から水素吸着表面の原子配列変化を高精度に決めることができることを明らかにした。この結果は当初予定していなかった新たな解析法につながるものである。
2)静的な結晶表面の高精度原子配列解析に関して、表面水素の配列構造だけでなく、Ni(111)表面上のアセチレン中の水素位置についても高精度に決められることを明らかにした。
今後、これらの方法論の実験データへの適用、および応用について検討をするための準備研究を行なった。

今後の研究の推進方策

本研究の2つのプロジェクトは予定通りに進み、目的とした方法論の開発ができた。ここで得られた方法を実験データへ適用し、さらに発展させるため、研究期間を延長することとした。予定している当面の課題は、以下の2つである。
1)予定していた方法論の開発に加え、注目する原子配列に敏感な条件を利用する方法論の適用と応用を検討する。この方法論について研究を進め、アセチレン以外の、表面に吸着した水素を含む分子中の水素位置を単ショットのRHEED強度分布から精度良く決める方法へと発展させる。
2)表面水素の位置に敏感な条件には、水素の表面垂直方向位置に対するもの、および表面平行方向位置に対するものの2つがあり、これらを区別できることがわかった。これを利用し、基板原子の表面直下、すなわちサブサーフェスの水素位置を単ショットの強度分布から決める方法についても検討する。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19感染症の影響で海外での国際会議が中止となり、また国内会議や研究の対面での打ち合わせも制限されたため、論文での出版、国内で開催された国際会議での研究発表と、国内会議でのオンラインでの研究発表のみ行なった。この変更などにより、予定していた研究発表のための予算などを次年度に使用し、これまでの研究をさらに発展させるとともに、成果の公表等を行うこととした。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Finding RHEED conditions sensitive to hydrogen position on Pd(100)2022

    • 著者名/発表者名
      Kawamura T.、Fukaya Y.、Fukutani K.
    • 雑誌名

      Surface Science

      巻: 722 ページ: 122098~122098

    • DOI

      10.1016/j.susc.2022.122098

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Origin of irregular X-ray mirage fringes from a bent, thin crystal2022

    • 著者名/発表者名
      Fukamachi Tomoe、Kawamura Takaaki
    • 雑誌名

      Acta Crystallographica Section A Foundations and Advances

      巻: 78 ページ: 422~429

    • DOI

      10.1107/S2053273322006143

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] RHEEDによる2x2-C2H2 -Ni(111)の構造決定精度2023

    • 著者名/発表者名
      川村隆明, 小倉正平, 深谷有喜, 福谷克之
    • 学会等名
      日本物理学会2023年春季大会
  • [学会発表] RHEED for Retrieval of Hydrogen Position on Metal Surface2022

    • 著者名/発表者名
      Takaaki Kawamura,Yuki Fukaya,Katsuyuki Fukutani
    • 学会等名
      The 22nd International Vacuum Congress
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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