2019年度に引き続き、固体試料用の時間分解スペクトル分光装置を用いて、紫外・近赤外領域レーザーパルス励起、可視領域レーザーパルス検出による金属薄膜の時間分解分光を行った。実験では、照射するレーザービームのビームサイズを正確に計測することで、照射フルエンスを正確に評価した。また、フェムト秒パルスの白色光をプローブ光として用いており、このパルスのチャープの寄与を正確に見積もる為、光パラメトリック増幅を行い、各時間におけるスペクトルの中心波長を測定して、群遅延を評価した。また、この結果を用いて、パルスの圧縮を行なった。 一方、データの解析では、本研究では2温度モデルを用いて反射率時間変化を評価することを目標としているが、解析を行うにあたって、単結晶、多結晶の各金薄膜試料の光未照射の定常状態における誘電率をエリプソメータを用いて評価した。その結果と、joint-density-of-states(JDOS)から算出したバンド間遷移の寄与、Drude modelを考慮して算出したバンド内遷移の寄与を取り込み、2温度モデルによって各時間における各波長の反射率をシミュレーションしたところ、膜厚や励起フルエンス、励起波長による実験条件の違いによる実験結果をよく再現することがわかった。シミュレーションでは、それぞれの電子状態の寄与が温度と励起フルエンスによって異なっていることが示された。本研究成果について、学会発表を行った。
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