研究課題
最終年度は、量子系におけるエネルギー準位間の遷移過程を加速する理論を作り、超伝導量子ビットの制御に適用した。複数の超伝導量子ビット間でエネルギー励起を移動させる制御を最適化した。この新規な理論は状態空間の仮想的軌道という画期的な考え方に基づいており、今後様々な系への応用が期待できる。本研究はScientific Reportsに掲載された。量子系の位相空間における高速回転の理論を開発するとともに、最近特に注目されているKerr-cat qubitという超伝導量子ビットのゲート操作に応用し、高い忠実度が実現できることを示した。本研究はPhys. Rev. Appliedに掲載された。またAPS March Meetingにおいて発表した。我々が開発した量子ダイナミクスのスピードを制御するための理論「早送り理論」のレビュー論文を執筆し、Philosophical transactions Aに掲載された。近年、実用性のある量子コンピュータの実現に向けた研究が盛んに行われている。量子計算にはデコヒーレンスの影響を低減するために短い時間で正確に状態を制御する事が求められる。我々は研究期間全体を通して、量子系の高速制御の理論的枠組みを拡張を行った。上記のエネルギー準位間の遷移過程の加速を可能にする新規な理論はその一例である。また実験的に実現しやすい極力単純な制御パラメータを導出することにも成功した。さらに量子コンピュータの中心的な構成要素である量子ビットへの応用も提案してきた。特にシリコン量子ビット、超伝導量子ビット、光格子に閉じ込められた冷却原子などの高速ゲート操作や初期化の理論を構築した。超伝導デバイス上の光共振器を高速で冷却する手法も提案できた。この研究を通じて量子系の制御に関する学問の発展に貢献できたのではないかと考えている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Philosophical Transactions of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences
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10.1098/rsta.2021.0278
Physical Review Applied
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Scientific Reports
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