本研究は固体に光を照射し、光の位相と偏光状態を制御することによって固体中の伝導電子の位相とスピン状態を操作する究極的な光-キャリア制御を目指す試みである。 一般的にフェムト秒光パルスの偏光は固定されているが、本装置の特長である直行する2成分の位相制御技術によって1パルス内の偏光回転方向を制御し、ラマン過程を経て光の角運動量を半導体量子井戸のキャリアのスピンに転写することは前年までに達成した。最終的な目標として掲げていたトポロジカル絶縁体のスピン電流の制御は台湾国立交通大学及び台湾国立成功大学との国際共同研究を通して台湾にて実施する予定であった。これはトポロジカル絶縁体のバンド構造設計を成功大学で実施し、交通大学にて実施する測定結果からレーザーパルス制御にフィードバックして最適化していく計画が練られていたが渡航がかなわず断念した。 光による半導体量子井戸構造のキャリアのスピン制御においてはスピンが輸送方向に反映される仕組みが施してあり、スピン制御の可否は電圧測定によって確認された。しかしより一般的にスピン流の発生を観察するためには光パルスのポンプ-プローブ測定による時間分解計測が必要である。これを実現するため偏光回転方向を制御したフェムト秒光パルスをダブルパルス化し、それぞれ偏光回転方向、偏光回転周波数、時間間隔を自在に操作する手法を台湾国立交通大学と共同開発し研究成果を論文にて発表した。
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