研究課題/領域番号 |
18K03490
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
喜久田 寿郎 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (20313588)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 電場効果 / エレクトレット / 自発分極 / 焦電気 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、試料である硫酸グリシンに加える横電場(c軸方向の電場)の影響による電気的特性の変化を調べている。焦電気を測定するために昇温しながら電流を測定しているが、再現性が見られないことが多く、その原因を探っている。一定温度に試料を保ったつもりであっても、室温の変動で試料周りと電流計との温度差が変動しこれによる熱起電力の変化が邪魔をしているようで、室温と流れる数 pA 程度の電流が比例しているように見える。試料と電流計の入力端子間にある接続部ができるだけ少なくなり温度変動も抑えるように、測定ブロックを作り替えている。また、単結晶を育成する際に使用する純水器が故障して結晶の育成を中断しているので、必要な器材を集めて修理を行っている。 測定については、再現性に難があるものの、以下の結果が得られている。1)横電場を印加しないときにはc軸方向に焦電気は見られず、長時間にわたる横電場を印加したときのみ温度の上昇と下降時に焦電気が見られる。ただし、温度を上げていき相転移温度を超えてしまうと、焦電気は見られず、再び相転移温度以下に戻しても焦電気は見られない。2)強誘電軸であるb軸方向には相転移温度以下で常に焦電気が見られるが、長時間にわたる横電場を印加したときには値が小さくなるような傾向が見られる。3)強誘電相で横電場をかけ続けると、流れる電流が初めはほとんど流れないが、時間が経つにつれある一定値へと飽和するように増大する。4)3)の測定の後、印加電場の向きを逆にすると電流がほとんど流れず、再び電場の向きを元に戻すと電流が流れる整流作用のような効果がある。5)3)の測定の後、印加電場の向きを逆にすると電流がほとんど流れないが、長時間にわたる印加で僅かだが電流が増大し始めるような傾向が見られる。 講義などのオンライン化の準備に時間が割かれ、学会に参加して経過を発表する余裕がなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
学生研究を最小限に抑えるようにしなければならない状況下で研究の見通しが立たず、時間のかかる結晶育成においては、学生研究での結晶育成装置の占有が長期にわたり、予定していたようには装置を使用できなく結晶を育成できなかったことや、年度途中から長年使用してきた純水器が故障して十分な量の水を得ることができなくなり、結晶育成を断念したことも理由の一つである。 電気的測定では、横電場により非強誘電軸方向に発生する自発分極を測定するときに使用するクライオスタットは、学生研究で使用するものと兼ねているため、本研究では長期間にわたり占有してしまうので学生研究を優先させたことも要因であるが、それ以上に、急遽使用した簡易クライオスタットの温度安定性が予想以上に悪く、室温の変動に左右されてしまい、測定のたびに異なる結果を得てしまったことなどが、研究が遅れた主な理由である。 このほか、講義などのオンライン化の準備のために、研究のために使える時間が大幅に減ってしまったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では単結晶を育成して試料を作り、それに電場を印加して流れる電流を測定するのが実験の作業手順であるから、第一には、試料のための単結晶の育成には水が必要なので、純水器の修理と洗浄を最優先で行いたい。なお、現在は修理を終えて洗浄を行っている。結晶育成装置は複数台あるので、本研究が占有できるものを1台確保して結晶成長を行う。 昨年度は学生が主に使用していたクライオスタットを今年度は本研究が優先して使用できるよう学生研究のテーマを考え、学生研究が本格的になる前に、安定した環境で横電場による電流を測定してしまう予定である。もともとの予定に組み込まれていたX線による結晶構造解析からの考察は、今後の研究にまわし本研究では全く行わないこととし、まずは、電気的測定により横電場の影響をきちんと測定することに努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
結晶育成装置が使用できなかったり純水器が故障したことにより試料結晶の作製があまり行えなかったためと、測定装置のノイズや温度変動のために測定を満足に行えなかったことにより研究が予定よりも遅れている。機器の修理や改善のために予定にはなかった材料や器具を購入することもあったが、実験の一部を省略したり、試薬の購入を控えたりしたため使用額が予定よりも減った。また、満足のいく結果が得られていないため、論文や学会など成果発表を控えたことも減額につながった。 本来ならば最終年度であったが、確信の持てる結果を得ていないため、研究期間を1年延長し、装置の細かな修理をすすめて満足のいく測定を行い、この研究についてあまり論文を書いてこなかったため、成果発表に次年度の使用額を充てたい。
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