研究実績の概要 |
今年度の第一の成果として、多数の軌道を持つ量子ドット系の非平衡近藤状態における電流ノイズに対する微視的フェルミ流体論の構築が挙げられる。非線形電流ゆらぎに対する電子相関の効果は、1個の準粒子励起のダイナミクスに加え、2個の準粒子の衝突積分に対応するケルディシュ形式の4点バーテックスのバイアス電圧依存性を1次まで正確に計算する必要がある。我々は、電子正孔対称性および時間反転対称性を持たない一般の場合における非線形電流ノイズの厳密な表式を導出し、さらに数値くりこみ群(NRG)を用いて軌道数N=4,6の非線形ファノ因子の近藤プラトー構造を明らかにした [1]。第二の成果は、SU(4)近藤効果における、コンダクタンスの温度依存性の普遍的スケーリング関数の振る舞いが、局在電子数によって顕著な違いを見せる現象に関するものである。我々は、最新のフェルミ液体論とNRGを用いて、この現象がコンダクタンスの温度に対する2乗の項が局在電子数が1個の場合には消失するため、局在電子数が2個のSU(4)近藤状態とは振る舞いが異なることを明らかにした[2]。 [1] Y.Teratani, R. Sakano, and A. Oguri, "Fermi liquid theory for nonlinear transport through a multilevel Anderson impurity", arXiv:2001.08348. [2] Y. Teratani, R. Sakano, T. Hata, T. Arakawa, M. Ferrier, K. Kobayashi, and A. Oguri, "Field-induced SU(4) to SU(2) Kondo crossover in a half-filling nanotube dot: spectral and finite-temperature properties", arXiv:2003.12715.
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