研究実績の概要 |
2021年度は、非平衡近藤効果の電流ノイズ公式の拡張、トンネル非対称性による三体相関のスピン依存性の分解、強相関U=∞極限の価数揺動領域から近藤領域へのクロスオーバーの振る舞いとその磁場依存性、多軌道SU(N)量子ドット系における三体相関、非局所アンドレーエフ散乱への寄与、等の理論研究を精力的に進めた。電流ノイズの一般公式の拡張にはグリーン関数のみならず、ケルディッシュ形式の非平衡バーテックス関数の低エネルギーの振る舞いに関する情報が必要になる。我々は、有限温度-有限バイアスにおいてワード-高橋恒等式を導き、電子正孔対称性や時間反転対称性が破れた一般の場合に適用できる非線形電流ノイズのバイアス電圧Vの3次項の係数の厳密な表式を得た[1]。この公式は、磁場中における電流ノイズのユニバーサルな近藤スケーリングや、価数揺動揺動領域における多軌道量子ドット系の三体相関に関する研究の基礎となっている。また、量子ドット系では、トンネル結合の左右非対称性が、同一スピンおよび異なるスピンを持つ電子間の3体相関の寄与に差異を与え、その影響が非線形応答電流に現れることを、数値くりこみ群を用いた詳細な計算によって示した[2]。さらに、小林研介氏、秦徳郎氏、Meydi Ferrier氏 等の実験グループとの共同研究を通して、カーボン・ナノチューブ量子ドットの電気伝導度の測定結果が三体相関効果によって説明できることが分かり、プレスリリースを行った[3]。 [1] Oguri, Teratani, Tsutsumi, Sakano, Phys. Rev. B (2022) [2] Tsutsumi, Teratani, Sakano, Oguri, Phys. Rev. B (2021) [3] Hata, Ferrier, Kobayashi, et al., Nat. Commun. (2021)
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