| 研究課題/領域番号 |
18K03496
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| 研究機関 | 大阪府立大学 |
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研究代表者 |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 量子光学 / 動的カシミール効果 / cavity QED / 非エルミート系 |
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| 研究実績の概要 |
高強度入射レーザー場と電子との非線形相互作用による高次高調波発生に対して、レーザー場による電子の励起から高調波発生までを一連の量子散逸過程として 捉え、電子の散逸過程と放射光の 複合的な運動をコンシステントに扱う高次高調波発生の理論を構築している。不可逆過程を力学的に基礎づける拡張ヒルベル ト空間における複素固有値問題に対してフロケーの方法を適用し、高調波発生過程の解析に向けた基礎理論の構築を進めた。2020年度においては、微小共振器の境界を周期的に強制振動を行うことで電磁場真空揺らぎがパラメトリック増幅し、増幅された仮想光子が有限バンド幅のフォトニックバンドへ実光子となって放射散逸する過程を、全系に対するフロケーリウビリアンの複素固有値問題を解くことによる厳密な解析を行った。特に系が持つシンプレクティック対称性に着目し、フロケーリウビリアンのスペクトルに質的に異なる転移が生じることを確認した。さらに、この系と本質的に同様な現象が生じているハミルトニアン系として、アルカリ不純物を含むポリアセチレンの電荷移動現象とESR応答の理論解析を行った。リウビリアンの固有値に対応して得られたのは系の固有モードに対する演算子表現であるが、固有モードに対する量子真空状態を定義し、双規格完全直交基底系の導出を行っているが、まだ完全な解を得るには至っていない。これらの研究成果は、光物性研究会、日本物理学会2020年秋季大会、2021年第７６回年次大会で発表を行った。また、学術雑誌Progress of Theoretical Physicsに論文発表を行い、研究成果を公表した。ポリアセチレンのドナー電子に対するコヒーレントESRに関しては、Physical Review A誌に掲載されることが決まっている。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では1年目に高強度レーザー場によって２準位量子系の固有振動数が周期的に時間変化する系での高次サイドバンド自発放射過程を回転波近似のもとで解析する手法を確立した。2年目の2019年度は、この研究成果を土台として、回転波近似を超え、仮想遷移相互作用を含んだ力学系での放射過程の定式化へと研究を進展させた。3年目には、フロケーリウビリアンの複素固有スペクトルを得ることに成功し、パラメトリック分岐と時間対称性の破れが生じる分岐構造を見出した。特に、系が有するシンプレクティック対称性が存在することが、この２つの質的に異なる分岐が現れるための要因であることを見出した点は大きな進展であった。また、研究対象としている系のハミルトニアン系での対応として、ポリアセチレンのドナー不純物のスピンに依存した電荷移動散逸過程と非線形ESRスペクトルの巨大応答現象を見出したことは大きな成果であった。この成果は、Physical Review A誌に掲載されることが決まっている。
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| 今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、さらに、固有状態を得て放射スペクトルを計算する予定であったが、コロナ感染対策対応、その他の業務によって、目的の完全達成には至らなかった。また、研究成果を様々な国際会議で発表し、国際的な研究交流をする予定であったが、これもできなかった。延長した今年度は、昨年度に残したこれらの課題を精力的に進める予定である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染のため、予定していた共同研究者との研究討議のための海外出張、国際会議参加が中止となったため
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