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2019 年度 実施状況報告書

多自由度Bose-Einstein凝縮体の一般的理論の構築とその実装

研究課題

研究課題/領域番号 18K03499
研究機関東京理科大学

研究代表者

渡部 昌平  東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 講師 (90726895)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードボース-アインシュタイン凝縮 / 多体効果 / 集団励起 / 一粒子励起
研究実績の概要

内部自由度をもつBECの研究に先駆け,building blockをベースにしたRPAによって多体効果を取り入れる枠組みをscalar BECでも構成してきたが,それを用い一粒子スぺクトルと集団励起の振る舞いを調べた.特に,可能な限り近似に寄らない部分に着目してBECの励起を議論した.vertex補正の有無で密度応答関数の温度依存性などは変わるが,一粒子スペクトルと密度応答関数のピークの一致性が低温領域で共通に見られることを確認した.また,一粒子励起のスペクトルから音速を見積もる従来の方法ではなく,RPAとsum-ruleを併用し音速の温度依存性を数値解析した.これらの理論に用いたbuilding blockを整理するにあたり,GavoretとNozieresによるBECの多体理論をうまく表現できるように定式化を進めたが,これによりGavoret-Nozieres理論の計算の見通しも大幅に改善された.BECの一粒子励起と集団励起が一致しないという最近の理論についてもsum-ruleと不等式による批判的考察を加え,以上のことを論文にまとめた.
そのほかに,多自由度系としてBose-Fermi混合気体におけるdipoleモードについて解析を行った.in-phaseやout-of-phaseのモード,流体力学領域における早い緩和モードはこれまで知られていたが,本研究で流体力学領域における遅い緩和モードを理論的にはじめて見出した.流体力学領域におけるこれらの緩和モードは,collisionless領域からクロスオーバー的に生じるのではなく,固有振動数が分岐して生じることもはじめて明らかにした.また,Groverの量子空間探索は光学格子上に引力ポテンシャルを用意した場合のシュレーディンガーダイナミクスと類似のものであるが,今回,複雑ネットワークと関連しfractal 格子上の量子空間探索についても論文を発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では内部自由度をもつBECを目標にしているが,その基礎となるscalar BECの部分も研究のターゲットにしている.内部自由度をもつBECの近似理論の研究は遅れているが,その分,その基礎となるscalar BECについて,Gavoret-Nozieresによる一般的な理論の行列形式による再定式化,それに伴うRPA理論の整備,BECの一粒子励起と集団励起が一致しないという理論に対する見解,以上を論文にまとめられたという点において,本年度の研究成果は大いに意味があると考える.

今後の研究の推進方策

今後は,scalar BECで得られたbuilding blockの知見を用いて,多自由度BECの多体理論の枠組みを構築する.特に,building blockから熱力学母関数や自己エネルギーを構築し,得られた枠組みを具体的なspinor BECの問題に適用する.

次年度使用額が生じた理由

(理由)昨年度に引き続き,今年度も単一年度枠の別予算を獲得し,エフォートが申請時の予定より少し異なった.それにより,当初予定していた物品や旅費の配分・予定が変わったため.
(使用計画) 次年度に必要な物品,また旅費として使用予定である.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Dipole Mode of Trapped Bose-Fermi Mixture Gas2020

    • 著者名/発表者名
      Yoji Asano, Shohei Watabe, Tetsuro Nikun
    • 雑誌名

      Journal of Low Temperature Physics

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s10909-019-02334-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dipole oscillation of a trapped Bose-Fermi-mixture gas in collisionless and hydrodynamic regimes2020

    • 著者名/発表者名
      Yoji Asano, Shohei Watabe, Tetsuro Nikun
    • 雑誌名

      PHYSICAL REVIEW A

      巻: 101 ページ: 013611

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevA.101.013611

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Scaling hypothesis of a spatial search on fractal lattices using a quantum walk2020

    • 著者名/発表者名
      Rei Sato, Tetsuro Nikuni, Shohei Watabe
    • 雑誌名

      PHYSICAL REVIEW A

      巻: 101 ページ: 022312

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevA.101.022312

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Single-particle excitation and density excitation in Bose-Einstein condensates2020

    • 著者名/発表者名
      Shohei Watabe
    • 雑誌名

      arXiv

      巻: - ページ: 2003.10813

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identities and Many-Body Approaches in Bose-Einstein Condensates2019

    • 著者名/発表者名
      S. Watabe
    • 雑誌名

      ACTA PHYSICA POLONICA A

      巻: 135 ページ: 1222

    • DOI

      10.12693/APhysPolA.135.1222

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 調和トラップ中のBose-Hubbard 模型におけるダークソリトン2020

    • 著者名/発表者名
      渡辺優雅, 渡部昌平, 二国徹郎
    • 学会等名
      日本物理学会2020 年年次大会
  • [学会発表] 双極子ボースハバードモデルの相境界近傍における準安定構造2020

    • 著者名/発表者名
      田村和大, 渡部昌平, 二国徹郎
    • 学会等名
      日本物理学会2020 年年次大会
  • [学会発表] 双極子ボースハバードモデルの秩序構2019

    • 著者名/発表者名
      田村和大, 渡部昌平, 二国徹郎
    • 学会等名
      日本物理学会2019 年秋季大会
  • [学会発表] Bose-Hubbard モデルにおける二粒子状態のR´enyi エンタングルメントエントロピー2019

    • 著者名/発表者名
      稲吉健, 渡部昌平, 二国徹郎
    • 学会等名
      日本物理学会2019 年秋季大会
  • [学会発表] 有限温度のBEC におけるダークソリトンの減衰過程2019

    • 著者名/発表者名
      大井一真, 渡部昌平, 二国徹郎
    • 学会等名
      日本物理学会2019 年秋季大会
  • [学会発表] 調和トラップ中のBose-Fermi 混合気体における集団振動の衝突領域から無衝突領域までの解析2019

    • 著者名/発表者名
      麻野曜司, 渡部昌平, 二国徹郎
    • 学会等名
      日本物理学会2019 年秋季大会
  • [学会発表] Dipole mode of trapped Bose-Fermi mixture gas2019

    • 著者名/発表者名
      Yoji Asano, Shohei Watabe, Tetsuro Nikuni
    • 学会等名
      Quantum Fluids and Solids 2019
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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