研究課題/領域番号 |
18K03501
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藪 博之 立命館大学, 理工学部, 教授 (60202371)
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研究分担者 |
宮川 貴彦 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70439925)
仲野 英司 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 准教授 (70582477)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 極低音原子気体 / ボース・フェルミ混合気体 / ボース・アインシュタイン凝縮 / 双極子原子 / ポーラロン フェルミ縮退 / フェルミ気体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、異なる量子統計性をもつ原子から成る極低温原子気体において、粒子相関が中間領域である場合に現れる相構造およびその変化を量子多体理論の方法を用いて明らかにすることである。本年度において、この研究目的のために行った研究実績およびその成果について述べる: A) 双極子相互作用するフェルミ原子を含む有限フェルミ系の新しい相構造:双極子相互作用する原子気体は相互作用の非等方性からこれまでにない相構造の発言が予想されている。本年度、我々(藪および分担者)は、前年度に得られた双極子相互作用する2成分フェルミ原子気体における2成分が交互に現れるALS構造の研究を発展させ、相変化のヒステリシス構造を明らかにするとともに、実験が達成されている双極子相互作用であるEr-Dy系に対して計算を行った。結果は、米国および日本物理学会で発表するとともに、Physical Review誌において論文として発表した。 B) 双極子相互作用する原子気体ポーラロンの構造:我々は前年度までに有限ポテンシャル中の希薄ボース気体にトラップされた1個の原子不純物が形成するポーラロンの構造を中間結合理論を用いて計算する方法を開発してきた。本年度は前年度から研究を開始した双極子相互作用する原子ポーラロンの計算を行い双極子相互作用の大きさとポーラロンの構造の変化を明らかにした。結果は日本物理学会および国際ワークショップで発表した。 C) 原子ポーラロンの応用的研究:前年度に開発した計算の応用として、原子気体のポーラロン緩和過程の理論の予備的計算を行い、原子スピンの緩和の理論的計算の結果を物理学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、それぞれの課題について研究は進展しており、研究成果も得られており、論文発表を行うとともに内外の研究集会での発表も行った: A)双極子相互作用するフェルミ原子を含む有限フェルミ系の新しい相構造:前年度までの結果と今年度新たに得られた結果をPhysical Review誌に掲載(Phys. Rev. A101, #033613)また米国物理学会(Milwaukee, Wisconsin)で発表を行うとともに、日本物理学会(2019年度秋季大会、岐阜大学)でも発表を行った。応用的な計算は進行中である。 B) 双極子相互作用する原子気体ポーラロンの構造:今年度までで得られた結果をまとめ、国際ワークショップ(CLUSHIQ2020)および物理学会で発表(第75回年次学会,名古屋大学)を行った。現在、論文を取りまとめ中である。 C) 原子ポーラロンの応用的研究:原子気体のポーラロン緩和過程の理論の予備的計算を行い、結果を物理学会(2019年度秋季大会、岐阜大学)で発表した。以上のことから、本科研費の研究課題は全体として順調に進捗していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の進捗状況および結果に基づき、研究の達成に向けて研究課題のさらなる推進を行う。 A) 双極子相互作用するフェルミ粒子とボース粒子の混合系:今年度の双極子フェルミ気体で得た結果を双極子相互作用するフェルミ粒子とボース粒子の混合系に応用する。このような原子気体混合系の研究はK40-Rb87やDy-Er系で実現しており、双極子相互作用が起因となる新奇な物理状態の実現が期待される。次年度は、双極子相互作用するフェルミ粒子とボース粒子の混合系の双極子相互作用による不安定性と我々の今年度の研究で明らかになったALS状態(密度波状態)の関係について研究を行う。またEr-Dyのフェルミ粒子とボース粒子の混合系の解析を行い、相分離状態について検討する。 B)双極子相互作用するボース気体の超個体のドロップレット状態:強い相互作用をもつ双極子相互作用するボース気体は超個体の性質を持ち、トラップ中でドロップレット状態ができる。ドロップレット状態のジョセフソン振動について議論して,ジョセフソン格子の位相と粒子の伝播現象について調べる。 C) 双極子相互作用する原子気体ポーラロンの構造:今年度までに得られた研究成果をまとめるとともに、実験によって得られた結果と比較を行って、論文として出版する。また、原子気体ポーラロンの緩和過程に関する結果についても論文としてまとめ出版する。また、今回得られた結果から新規な現象について考察し、そのための計算を実行する。また、得られた成果の他領域への応用研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に基づく成果発表を、3月に開催される予定であった日本物理学会第75回大会(名古屋,愛知)で行うため、代表者および分担者は参加予定であったが、新型コロナウイルスの感染症対策のため学会の集会は中止となった(学会の発表はネット上の発表となり有効である)ため、今年度予定していた旅費を一部次年度にまわし、来年度旅費と合わせて用いる。また、消耗品費の残額は次年度に繰り越し、合わせて用いるほうが有効であると判断した。
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