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2019 年度 実施状況報告書

化学圧力で相制御可能な多形磁性体の創製と磁気応答機能の探索

研究課題

研究課題/領域番号 18K03506
研究機関東京農工大学

研究代表者

香取 浩子  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10211707)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード磁性 / 多形 / 分子軌道モデル
研究実績の概要

本研究では化学組成が同じで結晶構造が異なる相が複数存在する磁性体を多形磁性体と呼ぶ。多形磁性体は、磁場による相制御が実現した場合、大きな磁気応答機能を持つことが期待される。本研究は、磁気応答機能が期待される多形磁性体は新たな機能性材料となりうるかという学術的問いに基づく。アンダルサイト構造、カイヤナイト構造、シリマナイト構造の3つの構造をとる多形鉱物 Al2SiO5 と同じ化学組成の磁性体 A2BO5 の研究には (1)化学圧力で相制御可能な多形磁性体の創製、(2)結晶構造と磁性との相関の研究、(3)磁気応答機能の探索、という点に学術的独自性・創造性がある。そこで本研究では A2BO5 を系統的に合成して化学圧力で相制御可能な多形磁性体を創製し、基礎物性の評価により巨大磁歪などの磁気応答機能を探索することを目的とする。
今年度は A=Cr,V,Fe、B=Ge の場合に注目した。Cr2GeO5,V2GeO5 は共にカイヤナイト構造をとる。V2GeO5 の帯磁率の温度依存性は、V がダイマーを形成する分子軌道モデルにより説明できることが明らかになった。さらに、固溶系 (Al,V)2GeO5 の磁性も V の分子軌道モデルを用いることで説明可能であることが明らかになった。また、これまで合成が困難であった Fe2GeO5 に対し、新たな合成法を用いた結果、良質な結晶の合成が可能になりつつある。Fe2GeO5 は多形磁性体であることが予想されているため、合成に成功できれば、新たな多形磁性体の発見となる可能性がある。
昨年度行った (Al,Fe)2GeO5 の中性子散乱実験のデータ解析が進んだ。昨年度、アンダルサイト構造の (Al,Fe)2GeO5 では非整合磁気構造が形成されていることを明らかにしたが、今年度は磁気構造の詳細を明らかにすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

多形磁性体の探索のために、A2GeO5 について、A が様々な元素の場合において精力的に試料合成を行った。今年度は、V2GeO5、(Al,V)2GeO5、(Cr,V)2GeO5 などの良質試料の合成に成功した。さらに、Fe2GeO5 の純良試料の合成指針が得られた。
また、これまで説明ができなかった V2GeO5 の磁性については分子軌道モデル、(Cr,V)2GeO5 の磁性については double exchange モデルの導入により、説明が可能となった。

今後の研究の推進方策

各種の磁性体試料の合成に成功したので、今後は、それらの物質の基礎物性測定を行って磁性を評価する。具体的に、結晶構造解析、磁化および交流帯磁率の測定を行う。
合成した磁性体試料に対して磁化曲線や磁歪の測定を行い、磁気応答機能の有無、及び磁気応答機能がある場合はその大きさを評価する。
Fe2GO5 の純良試料の合成指針が得られたため、今後の研究により、この物質が多形磁性体であるかどうかを明らかにする。また、V2GeO5 の磁性については分子軌道モデル、(Cr,V)2GeO5 の磁性については double exchange モデルの導入により説明が可能となったため、今後は A2GeO5 の磁性が総括的に議論できるようになると考えている。
多型磁性体を示す(Al,Fe)2GeO5では2種類以上の構造が共存する試料も合成可能である。共存状態の試料は、準安定状態にあるために低磁場で容易に相変化できる「やわらかさ」を備えている可能性がある。そこで、昨年度に取り組むことができなかった共存領域の試料に対して磁気応答機能の評価を行う。

次年度使用額が生じた理由

所有している磁化測定装置(VSM)の不調により、外部機関における共同利用において磁化測定を行ったため、寒剤代が当初予定していたほどかからなかった。数か月、研究室内で実験が実施できなかったため、当初予定していた実験が一部実施できなかったため、実験に関わる消耗品の購入が当初予定よりも少なかった。実施出来なかった実験については、次年度に行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 粉末中性子回折測定によるandalusite相AlxFe2-xGeO5の磁気構造研究2020

    • 著者名/発表者名
      柿本和勇, 太田寛人, 原口祐哉, 萩原雅人, 鳥居周輝, 神山崇, 香取浩子
    • 学会等名
      日本物理学会 第75回年次大会
  • [学会発表] Magnetic Properties of Kyanites M2GeO5 (M=Cr and V)2020

    • 著者名/発表者名
      香取浩子
    • 学会等名
      International Symposium of Thermal and Entropic Science
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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