研究課題
正方晶鉄系超伝導体の一つにAFeAs(A:アルカリ金属)のような111系と呼ばれるものがある。この結晶構造は非共形空間群P4/nmmであり,隣り合ったA同士の中点に空間反転対称性があるものの,原子位置には空間反転対称性がない特徴をもつ。そのため,局所的な空間反転対称性がないことによる特異な縮退の破れから現れる物性に興味がもたれている。近年,同じ結晶構造をもつRXSi(R:希土類元素,X:遷移金属元素)の単結晶育成技術が進み,LaCoSi,CeCoSi,LaMnSi,CeMnSiなどの化合物について詳細な実験により詳細な物性評価が行われてきた。特に,CeMnSiの磁化率から,242 Kで単位胞内に2個あるMnの3d電子のスピンが面内に反平行に整列するq=0の反強磁性秩序を示すことが示唆された。さらに温度を下げると,その磁化率は低温で温度に依存しなくなり,電気抵抗は極大を示した後,減少する振る舞いを示す。比熱は先に述べた反強磁性を除いて他の相転移を示す異常は観測されなかった。これから,反強磁性秩序による時間反転対称性の破れと結晶構造由来の空間反転対称性の破れが同時に起きている中で,Mnの遍歴的な3d電子とCeの局在的な4f電子が結合することで,低温で磁性を消失したと言える。通常の重い電子状態は時間反転対称性が偶の中で磁性を消失することが考えられているが,本化合物のような非共形空間群の系では,時空間反転対称性が偶の中で局在電子の磁性が消失していると考えられる。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 92 ページ: 1-12
10.7566/JPSJ.92.044703
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