研究実績の概要 |
30年度は以下の2点について研究を行った。 (1)すでに開発済みの「磁場下超伝導体のための電流密度汎関数理論」(JPSJ 86, 104705 (2017))を,スピンを含む形に拡張して「超伝導混合状態のための電流スピン密度汎関数理論」の定式化を行った。これは研究計画調書の”研究目的1”に相当する。具体的には、超伝導秩序変数,スピン密度,電流密度および電荷密度を基本変数としたHK定理を証明し、それを基礎として有効一粒子方程式を導出した。この方程式を先の論文(JPSJ 86, 104705 (2017))で用いたドジャン近似で書き下すと、ギャップ方程式に相当する方程式が得られた。この方程式を解くことで、外部磁場と温度をパラメータとする超伝導/常伝導の相図が定量的に得られるはずである。今回開発した「超伝導混合状態のための電流スピン密度汎関数理論」の有効性を確認するためのテスト計算として、このギャップ方程式を”一様系で解く”計算プログラムの開発にも着手した。 (2)上述したように「超伝導混合状態のための電流スピン密度汎関数理論」の有効一粒子方程式が導出された。この有効一粒子方程式を近似的に解く際に必要な”磁場下常伝導状態の精度の良い計算手法”を新たに開発した。この新しい計算手法を「非摂動論的なMFRTB法」と呼ぶ(PRB 97, 195135 (2018))。「非摂動論的なMFRTB法」を開発した理由は、実験室レベルの磁場強度においても、従来のMFRTB法(PRB 91, 075122 (2015); PRB 91, 245101 (2015); PRB 95, 195153 (2017);PRB 96, 235125 (2017))では、理論が摂動論に立脚しているがゆえに誤差が無視できないことが明らかになったためである。これは研究計画調書の”研究目的2(の一部)”に相当する。
|