研究課題
21年度(令和2年度~3年度)の目標として、申請者が提案する光水熱合成法を用いて、量子スピン軌道液体状態を示すBa3CuSb2O9の周辺物質の探索と合成及び物性測定を掲げた。本年度は19年度までに作成した光水熱合成装置を用いて、光を照射した場合としない場合を比較しながら物質合成を行った。また、20年度から引き続き合成装置の改良を継続して行った。当初計画していた光水熱合成炉を卓上で用いられる様、小型化した合成炉を開発し、熱欲からの輻射熱を低減できた。また、熱浴の小型化により合成炉本体の移設・移動が容易になり、大型光源の利用も可能になる等、光源の選択幅も広げることを可能とした。前年度まで所属していた福井大学遠赤外領域開発研究センター所有の高出力ジャイロトロン(154GHz, 150W)を光源として利用することを目的としたが、所属変更により共同研究等での利用を目指している。本年度は前年度に引き続きGunn発振器を用いて、合成条件が確立されているBa系セレン化遷移金属(Ni, Co)酸化物の結晶合成・育成を行った。光を照射せずに育成を行った場合、両遷移金属を含むセレン酸化物で、粉末又は球状成長でしかなかったものが、照射しながら結晶育成を行った場合には、球状成長した結晶と混在する形で針状結晶の成長が確認された。XRDの結果、この針状結晶も目的物質で有ることが確認された。両物質とも遷移金属元素が歪んだハニカム格子を持つ。基礎物性として磁気的特性は知られておらず、これらの結晶を用いて磁性測定を試みた。測定はこの結晶を集め、配向試料を作成し、ハニカム格子面内・面間に磁場を印加し測定を行った。Coを含むセレン酸化物では、磁化率の温度依存性に7K付近で反強磁性的なピークを示す結果が得られた。また、磁化過程からハニカム格子面間に磁場を印加した場合、3T付近でスピンフロップ的な異常が観測された。
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Applied Magnetic Resonance
巻: 52 ページ: 411~424
10.1007/s00723-020-01295-x