研究課題
2020年度においては、引き続きFeSeおよびその関連系を中心として圧力相図の解明を目的とする研究を推進した。まず、試料作製に関しては、FeSeにSをドープしたFeSe1-xSx系単結晶試料の作製を行い、作製法の改良を行った結果、x=0.17までの単結晶試料を得ることができた。また、Teドープ系のFeSe1-xTex系単結晶試料の作製についても同様に化学気相輸送法により行い、0≦x≦0.3の試料を得ることにも成功した。次に圧力下物性測定に関しては、前年度はSvitlykやBohmerらによりダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いたX線回折測定により発見・報告された8 GPa以上における非超伝導であるOrthoⅡ相への構造相転移をDACを用いた磁化測定から検証し超伝導が高圧下で消失することを実験的に明らかにした。2020年度はさらに踏み込んで、高圧下超伝導の単結晶試料の厚みに対する依存性を調査した。結果として、ガスケット中の試料空間の高さ30-40μmに対して単結晶試料の厚みが20μm程度のときは超伝導が消失する一方、8μmのときは8 GPaの高圧下においても超伝導が存続することが分かった。この結果は完全な静水圧が発生できるcubic anvil pressによるJ. P. Sunらの結果と同様であり、試料を薄くすることにより静水圧性が改善されたためであると考えることができる。これらの結果は論文にまとめ現在投稿中である。また、FeSe1-xSx系のx=0.08の試料に対してもDACによる圧力下磁化測定を行い、3 GPa以上において磁気相と直方晶構造が同時に出現することを示唆する結果を得た。また、NdFeAsO1-xFx系の微量Fドープパルス通電焼結(PCS)試料において圧力誘起超伝導を観測することに成功した。これら2点について日本物理学会第76回年次大会で報告した。
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 90 ページ: -