研究課題/領域番号 |
18K03518
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (10223596)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電気四極子秩序 / 超伝導 / 静水圧力 / 一軸圧力 / 2チャンネル近藤効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,反強四極子転移温度TQ=0.11 K以下のTc=0.05 Kで超伝導を示すPr化合物PrIr2Zn20 の超伝導と四極子自由度の相関を20 GPaまでの静水圧および一軸圧下の電気抵抗と比熱測定から明らかにすること,および,最近予言された,磁気モーメントの残ったNdTr2Zn20 (Tr=Ir, Co, Rh)における2チャンネル近藤効果を静水圧下の電気抵抗測定によって検証することである。 PrIr2Zn20の超伝導と四極子自由度の相関について,昨年度までは,静水圧性の異なる二つの圧力媒体(アルゴン,グリセリン)を用いて,10 GPaまでの圧力下における電気抵抗を0.04 Kまで測定した。その結果,比較的静水圧の高いアルゴンを圧力媒体として用いた場合,10 GPaまで反強四極子秩序と超伝導は共存した。一方,圧力媒体として室温で5 GPa以上で固化するグリセリンを用いた場合,反強四極子秩序と超伝導は5 GPa以上で同時消失したことは,超伝導に四極子の自由度が必要であることを強く示唆する。本年度は,そのことを検証するために,静水圧性の異なる別の圧力媒体(フロリナート,固化圧1 GPa)を用いて,圧力下の電気抵抗を測定した。その結果,固化圧を超えた9 GPaまで加圧しても,四極子秩序に起因する電気抵抗の折れ曲がりは消失しなかったが,超伝導も消失しなかった。このことは,超伝導に四極子の自由度が必要であるという上記の結論に矛盾しない。 また,20 GPaまでの静水圧下でPrIr2Zn20とNdTr2Zn20 (Tr=Ir, Co, Rh)の電気抵抗測定を行うため,本年度はアルゴン圧力媒体を確実に試料空間に封止出来る方法を確立した。現在,ガスケットの寸法を変更して発生圧力の向上に向けた試験加圧を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PrIr2Zn20とNdTr2Zn20 (Tr=Ir, Co, Rh)の12 GPaまでの電気抵抗測定まで,計画は順調に進んでいる。特に,静水圧性の異なるPrIr2Zn20の電気抵抗測定から,その超伝導に四極子の自由度が必要不可欠であることを実験的に初めて明らかにした。この成果は論文として纏め,現在投稿中である。また,それ以外の成果も国内外の学会で3件の発表を行ったので,おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
PrIr2Zn20の非静水圧の効果からヒントを得て,試料に直接一軸圧を加えて,その四極子転移や超伝導転移を調べるため,0.05 Kの極低温下で一軸圧下の電気抵抗を測定できるシステムを開発する。 次年度では,20 GPaまでの静水圧下でPrIr2Zn20とNdTr2Zn20 (Tr=Ir, Co, Rh)の電気抵抗測定を行うための実験手法を確立する。そのために,これまで使用していたタングステンカーバイト製のアンビルをより高強度な焼結ダイヤモンド製に変更する。また,ガスケットの寸法や材質,アンビルトップの直径などを変えて,20 GPaまでの超高圧力下で,安定に電気抵抗が測定できる条件を探索する。
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