研究実績の概要 |
λ-(BETS)2FeCl4は磁場誘起超伝導体として注目され盛んに研究されてきた。高磁場の超伝導発現機構は解明されたと言っても良いが,低磁場の反強磁性状態,金属絶縁体転移の機構は未解決である。そこで本研究は,λ-(BETS)2FeCl4の磁気秩序状態における鉄の3dスピンの役割,そして金属絶縁体転移の起源を,圧力下磁化測定とμSR測定により明らかにすることを目的とする。今回のターゲットとなる物質は,lambda相とよばれる相である。しかし,合成条件があまり明確になっておらず,合成が困難である。そこで,最適な試料合成条件を探索している。 2019年度は主に昨年度より引き続き,合成条件の最適化と,圧力下磁化測定のための基礎データを取得した。 試料合成においては,これまで知られていたkappa相とlambda相の他に,異なる組成比の試料や,鉄が分解してBETSとClのみの塩が生成してしまうことがわかった。そのような中で,溶媒の割合と温度条件がわかってきたので,試料合成が進行中である。現在,µSRと磁化測定に必要な目標量の70パーセントまで合成が終わった。 圧力下磁化測定のための予備測定では,圧力セルのバックグラウンドを測定し,またそのセルをつかって,錫マノメータを用いて5 kbarまでの圧力校正を行なった。また,圧力効果は既知であるが,磁化率が非常に小さいMEM(TCNQ)2の予備測定を行い,磁化率の非常に小さい試料でも測定が可能であることがわかった。
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