研究課題
本課題では、量子カゴメ反強磁性体のモデル物質であるCaCu3(OH)6Cl2・0.6H2O(Ca-kapellasite)の基底状態の解明、磁化プラトーの探索と強磁場相の解明、関連する量子カゴメ反強磁性体の探索と物性評価を目的として研究を行った。最終年度は重水置換した単結晶試料を作製し、2D-NMR、磁場下中性子回折、超強磁場磁化測定を行った。その結果、7.2 Kにおけるq = 0 (negative chirality)の長距離秩序の確立、7.2 K直上のスピン液体的な短距離秩序の観測、5 Tにおける磁気状態の変化、125 T(飽和磁化の6割程度)までの磁化過程に磁化プラトーなどの特異な磁場相がないことを確認した。このうち、2D-NMRで得られた成果をまとめた論文はJPSJに掲載され、その他については現在論文としてまとめている。また、Ca-kapellasiteに関連するカゴメ反強磁性体CdCu3(OH)6Cl2の磁性の解明を進め、本物質ではCu2+の軌道配列により磁気相互作用のネットワークが低対称化し、有効的には1次元鎖と鎖間のフリースピンで系の磁性が説明できることを明らかにした。その成果をまとめた論文はJPSJに掲載された。研究期間全体を通して、本物質におけるNMR、中性子、磁化、熱ホール測定などの微視的、巨視的測定が大きく進展した。その結果、本物質がq = 0の長距離秩序を示すこと、磁気秩序相において異方的なスピン揺らぎが存在すること、また磁気転移直上にスピン液体との関連が期待される短距離秩序相が存在することが明らかになった。また、磁場中では125 Tまで磁化プラトーは存在しないものの、5 Tでq = 0秩序のカゴメ面内での回転に対応する振る舞いが観測された。これらはカゴメ反強磁性体で期待されるスピン液体の性質に関連する結果であり、実験的な検証として意義深い。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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