研究課題
本年度はダイヤモンドアンビルセル(DAC)での超高圧発生とは別にサファイアアンビルセルを用いた高圧発生装置の立ち上げを実施した。サファイアはダイヤモンドに比べると硬度(ヌープ硬度でサファイアは1800程度、ダイヤモンドは5500程度)が劣り脆いため、発生圧力に限界があるが、価格の面で遥かに安価で大型のアンビルを作成することが可能となる。この利点を最大限活用し本年度は室温での超音波伝搬、伝送法を試み、調整を行った。サファイアアンビルセル自身の音響インピーダンスならびに超音波エコーのS/N比(分解能)向上、改善を図るために複数のセルについて室温にて自身の高周波伝送、超音波エコー系列を詳細に測定した。可能な限りインピーダンス整合を向上させるため、昨年実施したダイヤモンドアンビルの際と同様、サファイアアンビル表面に直接圧電素子(トランスデューサ)を専用の接着剤(ポリサルファイド・シーラント)を用いて貼付した。サファイアアンビルを透過した超音波信号は、接着剤の種類ならびに量に大きく依存し、圧電素子と測定対象物(ここではサファイアアンビル)との相性もある。そのため、昨年は複数のエポキシ樹脂について、接着料、形状、表面位置について条件を変化させ、最適条件を探し決定した。こうしてダイヤモンド、ならびにサファイアアンビルセルの超音波伝送に関するデータベースを構築した。今後は低温領域へ測定範囲を拡大し、昨年度実施したダイヤモンドアンビルセルの結果と比較しながら装置の完成を目指す予定である。
4: 遅れている
COVID-19の影響で大きく研究が遅延していることに加え、寒剤価格が高騰し、低温領域(液体ヘリウムを用いた温度領域)での測定が実施できない状況にある。
先ずは、寒剤を用いない温度(室温)で超高圧発生装置を用いて超音波計測の高分解能化を図り、ダイヤモンドアンビルセルならびにサファイアアンビルセルについて音響インピーダンス整合、測定条件・環境の調整、整備を実施する。寒剤価格の高騰を受け、本学での低温実験が困難な場合、可能であれば、他大学での共同利用施設の活用も視野に入れて研究を推進する。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴い、本研究で使用予定であった超高圧発生装置の一部購入が困難になったことと、寒剤価格の高騰に伴い、寒剤を用いた低温領域の測定実施が困難となった。次年度使用額が生じた主な理由がこの2点として挙げられる。
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巻: 6 ページ: 9926-9932