研究課題
前年度までの研究によって,MgCu2O3に対してLi置換を行うと,原子サイトの乱れによってドープされたホールキャリアが局在することが明らかとなった.そこで,本年度は以下の研究を実施した.(1)MgCu2O3と同じ結晶構造をとるCaCu2O3に対して,CaサイトをNaで置換した物質の高圧合成を行なった.Ca,Cu,Naは,互いにイオン半径が大きく異なることから,原子サイトの乱れを低減することが可能であると期待される.しかし,高圧下では,無限層構造のCaCuO2が安定化し,擬1次元梯子構造の安定化は困難であることが明らかとなった.(2)(1)の研究から,MgサイトをCaで全置換することは困難であることが明らかとなった.そこで,Mg1-xLixCu2O3において,反強磁性転移温度が最も低い組成であるx=0.30にLi量を固定して,MgをCaで置換したMg0.7-yCayLi0.3Cu2O3を高圧合成法によって作製し,その電子物性を調べた.これは,Mg1-xLixCu2O3における原子サイトの乱れの主な原因を明らかにすること,そして,さらに乱れを低減することを目的としたものである.得られた試料に対して粉末X線回折実験を行なった結果,Ca量y = 0-0.20の試料では不純物ピークは観測されず,単相試料を作製することに成功した.磁化率の温度依存性を測定したところ,反強磁性転移温度は,Ca置換によって1 K程度低下するものの,その変化はそれほど大きくないことが明らかとなった.これは,原子サイトの乱れの原因は,主にCuとLiにより生ずるものであることを示唆している.
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Physical Review B
巻: 101 ページ: 245112/1-7
10.1103/PhysRevB.101.245112
巻: 102 ページ: 035104/1-13
10.1103/PhysRevB.102.035104