モット転移の研究が始まって50年以上が経つ現在でも、モット転移やその臨界現象について実験的に調べ議論され始めたのは近年のことである。その一方で、低い超伝導臨界温度やバンド幅制御型のモット絶縁体が少ないこと、量子臨界点が有限温度に存在しないこと等々の実験的な不都合のため当該領域における研究の加速度はそれほど大きくない。 本研究課題では比較的低圧力(~200MPa)で電子状態を制御可能なバンド幅制御型モット絶縁体である面心立方格子の分子性固体である三価の還元状態にあるフラーレンを用いて、銅酸化物でも見られる異常な金属状態の起源と、分子自由度と電子相関が密接に絡み合った系における金属絶縁体転移の性質を実験的に明らかにすることを目的とする。 合成した試料の同定を行うため外部共同研究施設を利用する予定であったが、新型肺炎感染拡大の影響が予想以上に大きく、所属機関からの研究出張が認められず十分な実験を行うことができなかった。最終年度はこれまでに得られた圧力下電気抵抗率測定のデータの解析をさらに進めることに注力した。
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