研究課題/領域番号 |
18K03533
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
佐藤 一彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60225927)
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研究分担者 |
谷口 弘三 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50323374)
髭本 亘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90291103)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機伝導体 / ミュオンスピン回転緩和法 / 低温 / 高圧 / 磁性 |
研究実績の概要 |
大強度陽子加速器施設ミュオン実験施設(J-PARC/MUSE)において、これまで以上の高い圧力下でミュオンスピン回転緩和法実験を行うために、新たな圧力容器を設計し、作成を行った。従前の圧力容器は試料空間の直径が8mm、圧力容器の壁の厚さが4mmであり、発生最大圧力は実際にミュオンスピン回転緩和実験を行うヘリウム温度において0.5GPaであった。新しい圧力容器はミュオンスピン回転緩和法実験の際にミュオンが試料に静止する割合を多少犠牲にしてより高い発生圧力を目指すこととし、試料空間の直径を7mm、圧力容器の壁の厚さを6mmとした。これにより計算上は1GPa以上の圧力下においてミュオンスピン回転緩和法実験が可能になると期待される。なお圧力容器の材質は圧力容器に良く用いられる非磁性材料の中でミュオンスピン緩和が比較的小さいことが分かっているNiCrAl合金を採用した。作成した圧力容器についてロックウェル硬さを測定し、文献通り十分な硬度を有していることは確認した。現在新しい圧力容器の加圧試験を行っており、予定通りの圧力が発生できるか検査しているところである。 本研究の主目的である有機反強磁性絶縁体β’-(BEDT-TTF)2ICl2の純良単結晶試料は全体で0.3gの育成をすることができた。引き続き育成を行いトータル1g程度の試料を準備し、0.5GPa以上の圧力下でのミュオンスピン回転緩和法実験により、β’-(BEDT-TTF)2ICl2の圧力下における磁気的性質の解明を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究の主目的である新しいミュオンスピン回転緩和法実験用圧力容器の設計・作成を遂行したので、研究計画はおおむね順調に進行している。ただし、圧力容器の完成を当初は2018年末と見込んでいたが、制作業者の都合により2019年3月にずれ込んでしまった。そのため圧力容器の性能テストが若干当初の予定より遅れている。しかし、テストはすでに取り掛かっており、2019年度早々に結果は出ると予想され、実際のミュオンスピン回転緩和法実験に影響はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度前半に作成したミュオンスピン回転緩和法実験圧力容器の性能テストを行い、設計に沿った発生最大圧力を発生できることを確かめる。同時に冷却時における圧力容器の温度勾配の測定も行う。以上は佐藤が中心に行う。測定を行うβ’-(BEDT-TTF)2ICl2の試料はすでに数100mgの作成を終えているが、今年度前半の間にさらに作成を行い、全体で1gの試料を準備することを目指す。試料作製は谷口が担当する。圧力下ミュオンスピン回転緩和法実験はJ-PARCに課題申請を行い、今年度後半に遂行する予定である。実験は佐藤・髭本が担当する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料の作成が予定していたより順調に進み、そのため薬品の使用量が予定より若干少なく済んだ。次年度では別の試料の合成も考えており、当該助成金はそのための薬品購入に充てる。
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