研究課題/領域番号 |
18K03537
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
海老原 孝雄 静岡大学, 理学部, 准教授 (20273162)
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研究分担者 |
松田 康弘 東京大学, 物性研究所, 准教授 (10292757)
関山 明 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40294160)
徳永 将史 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50300885)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / 重い電子系 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来から設置されている装置によって育成された結晶を用いて測定への展開を図ることと、今回の研究費による新装置での結晶育成を進展させることの二つの大きな柱がある。 まず1本目の柱では、従来から設置されている装置によって育成された非フェルミ液体的挙動を示す重い電子系物質CeNi2Ge2の結晶で光電子分光測定が行われ、フェルミエネルギー近傍で極めて平坦なバンドが存在することが確認された。この成果はPhys. Rev. B 97, 115160 (2018)に発表した。また、高圧下で超伝導を示す重い電子系物質CeCu2Ge2の単結晶において、4f電子の基底状態を光電子分光を用いて決定し、Phys. Rev. B 98, 121113(R) (2018)に発表した。 2本目の柱の成果として、今回の研究費によって、不活性ガス雰囲気中で実用上限温度1,600℃まで到達できるMoSI2発熱体を用いた結晶育成炉が平成30年 10月に導入でき、この炉の導入によって、軟化点が約1200℃の石英管に真空封入をせずに試料合成が可能になった。このことで、従来はインジウムやスズあるいはアンチモンなどの900℃程度の融点を持つ金属にフラックスとして使用できる金属が限られていたものを、1000℃~1,400℃程度の融点を持つ金属もフラックスとして使用可能になった。さらに、目的の物質の融点が1,500℃程度でも対応できるようになったため、これまで不可能であった温度領域および手法での試料育成が初年度に可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究費によって、不活性ガス雰囲気中で実用上限温度1,600℃まで到達できるMoSI2発熱体を用いた結晶育成炉が10月に導入できた。これによって、従来は900℃程度までの融点を持つフラックス(例えばIn, Sn, Sb)でしか行えなかったフラックス法による結晶育成が、より高融点(~1,200℃)を持つフラックスを使用することが可能になり、また高融点金属ルツボを用いた封入型の結晶育成が可能になるなど、初年度の後半ではこれまで不可能であった温度領域および手法での試料育成が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究費によって、不活性ガス雰囲気中で実用上限温度1,600℃まで到達できるMoSI2発熱体を用いた結晶育成炉によって、これまで育成困難だと思われてきた物質の育成方法を開拓しつつある。育成技術の確立と熟成を推進し、純良な結晶を得るとともに、電気抵抗・磁化率・比熱の測定を通じて基礎物性評価を行なった上で、光電子分光や強磁場物性量子振動現象の観測を中心とした物性研究への展開を図る。
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