最近、量子臨界現象を示すbeta-YbAlB4の姉妹物質alpha-YbAlB4のAlにFeを1.4%ドープしたalpha-YbAl1-xFexB4 (x =0.014)において、価数量子臨界点および価数量子臨界性の直接的証拠が実験により観測された。価数量子臨界性の起源は、Ybサイトの4f軌道と5d軌道の間の斥力Ufdであることをこれまでの理論研究により指摘してきた。 本研究ではbeta-YbAlB4において、Ybの5d軌道の寄与を実験で検知する可能性を探るため、超音波応答に着目した。これまで、非従来型の量子臨界現象を示す重い電子系物質における弾性定数の理論計算は報告されていなかった。本研究では、beta-YbAlB4の結晶構造の対称性を正確に考慮し、Ybの4f軌道と5d軌道、Bの2p軌道からなる低エネルギーの有効模型を構築した。この模型に基づいて、軌道間斥力Ufdについての乱雑位相近似法を適用して四極子感受率の計算を行ったところ、価数量子臨界点で臨界価数ゆらぎが発散するとともに、電気四極子感受率も降温につれて増大を示すことを見出した。その結果、結晶場第一励起エネルギーの約80 K以下の低温領域で縦波モードのみならず横波モードにもソフトが現れることがわかった。これはYbの5d軌道の寄与によるものであり、このソフト化が観測されれば実験により直接Yb 5d軌道の寄与が確かめられたことになる。 SmSの圧力下の絶縁体-半金属相転移(black-golden転移)の微視的な機構解明を目的として、Smの4f軌道と5d軌道からなる有効模型を構築して理論解析を行った。その結果、Smの4f-5d軌道間斥力の効果により、Smの1次の価数転移と絶縁体-半金属相転移が同時に駆動されることを明らかにし、black-golden転移がよく説明されることを示した。
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