研究課題/領域番号 |
18K03544
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
與儀 護 琉球大学, 理学部, 准教授 (60404555)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 籠状化合物 / 核磁気共鳴 / J多重項 / サイト選択的元素置換 |
研究実績の概要 |
本研究では結晶構造に籠状構造をとるRBe13(NaZn13型構造)とRRu2In2Zn18(CeCr2Al20型類似構造)に着目している。核磁気共鳴(NMR)や核四重極共鳴(NQR)を用いて、原子核周りの局所対称性や格子振動、4f 電子による物性への寄与を明らかにする事を目指している。 NaZn13型構造をとる化合物については、希土類元素としてYとEuをとるYBe13とEuBe13についてNMR測定を行った。YBe13について共鳴スペクトルを解析した結果、Beサイトの電場勾配はほぼゼロであることを見いだした。LaBe13においてはBeサイトに有限の電場勾配があることを昨年度報告している。両者の違いは格子定数の差にあると推測されるが、それだけで説明できるかは不明であるため、今後更なる研究が必要である。緩和時間T1についても測定を行ったが、その結果はLaBe13と同様で、通常金属的な振る舞いが観測された。EuBe13について、新たな単結晶試料のNMR測定を行った。共鳴スペクトルの解析から以前の試料より良質であることが見いだされた。スペクトルから得られたスピン磁化率に対応するナイトシフトについて解析を行った。その結果、三価のEu状態を反映した近接したJ多重項と、そのエネルギーギャップの大きさを評価することができた。 CeCr2Al20類似構造をとるLaRu2In2Zn18について、育成条件の異なる複数のバッチの試料について、InサイトのNQRスペクトルを測定した。各原子位置の局所対称性を考慮に入れたスペクトル解析を行った結果、Inは3つあるZnサイトの中の16cサイトに置換されていることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はRBe13についてはYBe13とEuBe13、RRu2In2Zn18についてはLaRu2In2Zn18についてNMRやNQR測定を行った。測定に関しては概ね順調に進んでいる。 RBe13に関して、YBe13についてのNMR測定はほぼ終了している。また、前年度問題であったEuBe13の共鳴スペクトルについては、新たな試料について測定した結果、試料依存性があることを見いだした。良質な試料を選定し、スペクトル解析からナイトシフトの評価を行った。現状の研究成果について、日本物理学科において発表を行った。 RRu2(Sn,In)2Zn18に関して、前年度行ったLaRu2Sn2Zn18と同様に、LaRu2In2Zn18においてもサイト選択的元素置換が行われていることをNQR測定から見いだした。この結果を基にPrを含む試料についても育成を進めており、今後NQR測定を行う予定である。現状の研究成果について、国際会議や日本物理学科において発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
非磁性RBe13化合物について、これまでの測定結果の取りまとめを行い、論文等の作成を行う。 RRu2In2Zn18については、Prを含む化合物についてIn核のNQR測定を行い、その微視的電子状態の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
主要な理由は新型コロナウイルスにより参加予定の学会が中止になり、旅費が不要となった事である。次年度実施の極低温NQR測定には多くの寒剤(液体ヘリウム)が必要であるため、「次年度使用額」はこれに充てることを計画している。
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