本研究では結晶構造に籠状構造をとるRBe13(NaZn13型構造)とRRu2In2Zn18(CeCr2Al20型類似構造)に着目し、核磁気共鳴(NMR)や核四重極共鳴(NQR)による微視的視点に基づく研究を行い、原子核周りの局所対称性や格子振動、4f 電子による物性への寄与を明らかにする事を目指している。 PrTi2Al20やPrV2Al20などでは非磁性Γ3結晶場基底による多極子の自由度による物性が発現する。その中で、PrRu2Zn20は構造相転移に伴い多極子の自由度が消失してしまう。一部のZnをSnやInに置換する事により、1-2-20型構造の安定化が試みられている。そこで、Inを置換したLaRu2In2Zn18について119In-NQRスペクトルを測定し、原子核周りの電場勾配の対称性を明らかにした。解析の結果、Inは主として16cサイトに置換されることを見出した。一方で、96gサイトへの置換も一部有ることから、結晶育成に関しては更なる改善の余地があることが分かった。 同様な方法で育成したPrRu2In2Zn18について核スピン-格子緩和率1/T1の測定を行った。その結果、高温での振る舞いは非磁性基底状態を仮定した結晶場で説明できることが分かった。一方で、約10K以下の低温領域では1/T1は温度減少に伴い顕著な増大を示すことを見出した。低温での1/T1の振る舞いについて検討するため、非磁性Γ1一重項を結晶場基底状態にとるPrBe13の1/T1を測定した。その結果、(非磁性Γ1である事を反映して)揺らぎの発達は観測されなかった。これらの結果から、PrRu2In2Zn18の結晶場基底状態は非磁性Γ3二重項であり、電気四極子や磁気八極子などの高次の多極子の揺らぎが低温で発達することを明らかにした。
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