研究課題/領域番号 |
18K03550
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
浜田 典昭 東京理科大学, 理工学部物理学科, 教授 (00126145)
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研究分担者 |
齋藤 智彦 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 教授 (30311129)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 部分状態密度 / 原子の光イオン化断面積 / 光電子スペクトル / 硬X線光電子分光(HAXPES) |
研究実績の概要 |
(プログラム開発)「角度積分光電子スペクトルの計算」に関して、前年度達成した枠組みに従って、計算精度の向上と使い易いプログラムの実現を目指して改良を重ね、実用に耐えるプログラムを完成した。原子の光イオン化断面積の計算精度を上げ、Yeh-Lindauの表には無い10,000eV程度までの断面積計算の信頼度を増した。部分状態密度計算に必要な原子半径の決め方を確立し、計算結果の物理的解釈がより意義あるものとなった。計算結果を表示するグラフィックプログラムを改善し、論文などに載せることができる良質の図を描けるようにした。 「角度分解光電子スペクトルの計算」では、原子極限モデルの範囲ではあるが一つのプロブラムを完成し、バンド構造とバンド電子の波動関数を用いた散乱断面積計算の枠組みを作った。原子極限モデルを拡張することにより、バンド電子の波動関数を用いた光電子スペクトル計算を進めている。 (テスト計算)Na金属とNaClイオン結晶を例に、性質の大きく異なる二つのNa原子について開発中のプログラムがうまく働くかどうか、テスト計算を行い、 良好な結果を得た。また、実用例として、デラフォサイト型CuAlO2などのテスト計算を繰り返し行い、使い易いプログラムの作成を行った。 (実験結果との比較)本年度は、PrCoO3の価電子帯の硬X線光電子分光スペクトル(HAXPES)を、HAXPESで顕著に現れる「入射光偏光-光電子放出角依存性」も含めて測定した。また、既に同様の測定を行っているデラフォサイト型銅酸化物CuMO2(M=Cr, Al)のデータ解析とバンド計算との比較の結果、これまで一般的に用いられてきている原子の電子光イオン化断面積と部分状態密度に基づいた光電子スペクトルシミュレーションでは不一致が大きいことを明らかにし、価電子帯におけるCu/Cr 4sp, Al 3s状態の重要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(プログラム開発)原子極限モデルによる「角度積分光電子スペクトルの計算プログラム」はほぼ完成し、良好に進展した。「角度分解光電子スペクトルの計算プログラム」ついて、その枠組みを確立し、バンド電子の波動関数を部分的に取り入れた計算を進め、来年度に繋がる成果を上げた。 (実験結果との比較)デラフォサイト型銅酸化物のHAXPES測定結果との比較において、明らかな改善が見られた。またCo酸化物についてもデータが蓄積されつつある。一方、より一般的な結果を得るためには、より多くの物質について入射光エネルギー及び偏光を変えた測定を行う必要がある。 以上を総合すると、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
(プログラム開発)「角度分解光電子スペクトルの計算プログラム」の開発に主力を注ぐ。まずは、原子極限モデルの拡張をすることにより、バンド電子の波動関数の一部を用いたプログラムを完成させる。さらに、バンド電子の波動関数をフルに用いたプログラムを発展させる。グラフィックによる計算結果の表示にも力を入れる。 (使い易いプログラムの作成)「角度積分光電子スペクトルの計算プログラム」はかなり使い易いプログラムとなっているので、 この経験を「角度分解光電子スペクトルの計算プログラム」にも応用し、プログラムを仕上げて行く。 (実験結果との比較)多くの物質について入射光エネルギー及び偏光を変えた定を行う。さらに、大学院生に対して利用講習会を実施し、各人が分担してより多くの物質に適用して妥当性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末のコロナ禍の影響で、旅費がかなり余っている。この状況は来年度も続くと予想されるので、状況の変化を見ながら適切に使用する。
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