研究実績の概要 |
研究目標は、スピン間に働く交換相互作用の値を、汎用的に、簡便に、正確に決定する方法の確立である。現在、Ni2V2O7の研究を行っている。この物質では、TN1 = 6.7 KとTN2 = 5.7 Kで磁気転移が起こるが、磁気構造は分かっていない。2 Kでは8から30 Tの間で1/2量子磁化プラトー(一種の常磁性状態)が見られる。2種類のNi2+サイト(Ni1とNi2)が存在する。スピンの値は1である。3種類の短いNi-Ni対が存在し、それらの反強磁性交換相互作用をJ1, J2, J3.と表すことにする。交換相互作用の値については以下の3組の報告例があり、結論が出ていない。J1 = 33.5 K, J2 = 37.4 K, J3 = 470 K (モデル1)、J1 = 1.8 K, J2 = 6.0 K, J3 = 161 K (モデル2)、J1 = 9 K, J2 = 38 K, J3 = 17 K (モデル3)。 2021年度には追加実験を行えなかったので、既存データの解析を進めている。3つの交換相互作用の符号を確定させる(全て反強磁性でいいか?)ために、ゼロ磁場での磁気構造が必要である。近日中に伝搬ベクトルを確定させて、磁気構造を決める。10 Tでの中性子回折実験の結果を詳細に解析し、Ni1とNi2の磁場誘起磁気モーメントはそれぞれ、0.2と2.0 muBと評価した。交換相互作用のエネルギースケールも考慮し、モデル2が正しいと結論付けた。また、スピン・ネマティック相が現れると考えられている6から8 Tでの中性子回折実験の結果も見直した。この磁場領域で、磁気秩序の存在を示す磁気反射が見られたので、スピン・ネマティック相は無いと考えられる。 関連物質として、Tb3RuO7とNd3RuO7の磁気構造を決めた。これらの結晶構造は良く似ているが、磁気構造は大きく異なることが分かった。
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