研究課題
現実の表面では必ず汚れや凹凸が存在する。汚れた部分は滑らかな表面が示す接触角と異なる接触角を示す。このため、汚れていない表面をスムースに移動していた液滴の接触線は汚れた部分との境界で引っかかり(ピン止め)、接触角だけが変化する現象が観察される。また、物理的な突起がある場合においても、突起に接触線がピン止めされ、接触角だけが変化する。このように現実の表面でピン止めが起きる。現実の濡れではピン止め現象は重要であるが、濡れの研究では注目されていない。その理由は幾つかあるが、適切な実験用資料の作製が難しいこと、理論的にゆがんだ液滴の形状を扱うことが困難であることが挙げられる。本研究で扱う対象の中で、化学的汚れ(油汚れ)のある試料の作製が困難であるため、1年目は表面構造のある表面(物理的欠陥のある表面)に注力して研究を行った。また、表面が汚れた水滴についても研究を行った。具体的には、3Dプリンターにより1cm角の表面に三辺が1-100 μmの突起がある表面を作製した。現在、水滴形状の観察に取り組んでいるところである。一方で、表面構造をつくったゴム基板に水滴をのせる実験で、基板の変形の有無によってピン止めがどの条件で強く作用して水滴形状がどのように変化するのかについても実験と研究の両面から研究を行った。現在、論文を執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
3Dプリンターにより1cm角の表面に三辺が1~100 μmの突起がある表面を作製した。現在、水滴形状の観察に取り組んでいる。また、形状の定量化(数式化)を行っているところである。一方で、表面構造をつくったゴム基板に水滴をのせる実験で、基板の変形の有無によって水滴形状がどのように変化するのかについても実験と研究の両面から研究成果を得た。現在、論文を執筆中である。このように当初の1年目の目標をおおむね達成している。
当初の計画通りに次の段階として、物理的欠陥で変形した水滴の形状の定量化を行い、表面積を求め、増加した表面エネルギーからピン止めエネルギーを算出する。その一方で、化学的ピン止め効果を有する表面の作製方法について検討を行う。
共著論文の原稿の英文校正や党綱領が予想よりもかからなかったこと(共著者が負担した場合が多かったこと)、消耗品の購入費が予想よりもかからなかったことが挙げられる。2年目では旅費の額が少ないので、差額分は旅費に当てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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