研究課題
2020年度の研究成果はいくつかあるが、そのなかでも汚れが付着しづらい表面(防汚性の表面)の作成に関して大きな成果が得られたので報告する。防汚性表面は実用の面で極めて重要である。窓ガラスを超親水性表面にすることで防汚性を付加することや、船底表面に海洋生物の付着を大きく抑制する防汚塗料を塗布することがよく知られている。これらに比べて、鉄道や道路などのインフラの防汚の研究はあまり進んでいない。具体的には、これらのインフラには標識やレールや橋梁のずれを検出するためのマーカー(反射板)が設置されているが、汚れが付着することで視認性が低下する。そのため、ある一定期間ごとにクリーニングする必要がある。今回は鉄道レールに固定してレールのずれを検出するマーカーについて検討を行った(立命館大学・西野朋喜助教、JR西日本コンサツタンツ(株)との共同研究)。具体的には、レールのマーカーには鉄粉、土埃、油滴等が付着し、汚れは不均一に付着して大きくムラのある汚れとなる。この不均一性のため、マーカーの位置の検出の際に大きな誤差が生じやすく、頻繁にクリーニングしたり、マーカーを交換する必要があり、メンテナンスの経費がかさむ原因となっている。したがって、汚れの付着しづらい表面にすることで、このようなインフラのメンテナンスに関する経費、手間、環境負荷が軽減されることが期待されている。今回、レールのマーカーのテフロンシートに微小な凹凸をつけて実験を行った。実験の結果、汚れは付着するものの、付着の度合いが抑制され、汚れの付着もより均一となり、汚れのムラも軽減することが見いだされた。これにより、マーカーの位置の測定の誤差が抑制され、従来のクリーニングの作業が軽減した。これとは対照的に親水性の表面では不均一な汚れが残ることが確認された。このように防汚性表面の実用化に向けた指針が得られた。
3: やや遅れている
2020年度は新型コロナウィルスの影響で、国内学会および国際学会がオンライン開催となったため、情報収集や情報交換を効率的に行うことができず、研究の進捗に遅延が生じている。
オンラインでの研究打ち合わせ等により情報収集を行うとともに、感染対策を講じて出張し、情報収集や情報交換を行い、研究を推進してゆく。
新型コロナウィルスの感染拡大により、出張ができず、旅費を使用しなかった。次年度では一部旅費として使用し、残りは研究に関係する資料の購入に充てる予定である。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
ACS Omega
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http://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/ge/chemical/staff_mayama.html