研究課題
前年に引き続き、電解質溶液中における球状コロイドのコロイド間距離をX線小角散乱を用いて精密に測定する実験を行った。実験は主として高エネルギー加速器研究機構のPhoton Factoryにて行った。とくに、温度依存性に注目して実験を行った。それらの結果を前年度までの結果と総合し、この系における平衡コロイド間距離の電解質依存性、温度依存性、コロイド濃度依存性をまとめた。その結果はいずれも、研究前の想定通り、コロイド間相互作用を表すこれまでの理論(DLVO理論)では説明できないものとなった。特に、DLVO理論ではコロイド濃度依存性は全く考えられないが、これがあることを実験的に示した点が重要である。そこで、我々はさらに、系全体の熱力学から再考し、コロイド濃度依存性が反映されるような理論構築を行った。Gibbs-Donnan平衡と呼ばれるコロイド系の熱力学と、これまでのDLVO理論との融合を目指した理論を構築をした。Gibbs-Donnan平衡では、系内のコロイドの数が重要となるため、自然と理論の中にコロイド濃度依存性を取り込むことができ、そのうえで電気二重層力を求めた新しい理論では、コロイド間距離のコロイド濃度依存性も示すことができた。しかし、計算で実験結果を用いる必要があり、実験結果のばらつきが計算結果に大きく影響を与えることが分かったため、計算結果が定量的に実験結果とよく合うことはなかった。そのため、電気二重層力の形式をデバイヒュッケル型、グイチャップマン型、中間型などに変えて結果を精査したり、Gibbs-Donnan平衡の条件を変化させながら結果を精査したり、研究分担者による溶液化学理論を考察するなどし、理論と実験の相関性の向上を図った。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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