研究課題/領域番号 |
18K03560
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
狐崎 創 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00301284)
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研究分担者 |
大信田 丈志 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (50294343)
中原 明生 日本大学, 理工学部, 教授 (60297778)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペーストの破壊 / 記憶効果 / 塑性変形 / レオロジー / ソフトマター |
研究実績の概要 |
本研究では固体微粒子と水などのペースト状の混合物に加振や磁場などを加えると、乾燥後に生じる亀裂が初期の摂動の方向に依存した異方的なパターンを作るという記憶効果について調べている。初年度と2年目に、大型放射光施設Spring-8への利用申請が認められ、マイクロX線CT(μCT)を用いたペースト内の粒子配列の測定を行うことができた。得られたデータは、作成条件や摂動の条件が異なる数十サンプル分の3D画像データである。本年度は研究メンバーとともに、2年目に購入した画像処理用の計算機を用いて、主に揺れの記憶を持つ石松子のペーストのデータについて画像解析を本格的に行い、解析結果について検討を行った。 石松子ペーストでは揺れを加えることで粒子配列が異方的になることと、粒子の隙間構造に揺れに垂直な方向に明瞭な異方性が確認できることに対して、本年度は画像解析でより定量的な解析と特徴づけを行い、さらに反発力が働く球状粒子系に単純ずり歪みが働いた場合を離散要素法による数値計算で調べ、解析結果との比較をした。また、測定で用いたのと同じ作成条件で乾燥亀裂のパターンを調べる実験を行って、亀裂の形態相図を完成させるとともに、ペーストの固化に用いた寒天と、造影剤として用いた塩化セシウムの影響を検討した。これらの成果は物理学会において報告を行っている。 関連して別途ハンガリーのFerenc Kun博士らが進めている異方的な破壊条件を持つ系での乾燥亀裂パターン形成の数値的な研究について、研究分担者の中原らとともに議論を行い共同研究を進めている。また大学院生とともに融けたパラフィンワックスが冷却する過程で発生する亀裂の成長を連続的に観察する実験装置を作り、亀裂の分岐過程を調べる研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では当初、2年間でSpring‐8でのマイクロX線CT測定を行い成果をまとめることを計画していたが、1年目に研究代表者の入院で測定が予定通り終わらなかったため、主要な測定が2年目に持ち越しとなった。Spring-8への申請が認められ2年目の後期に無事に予定された測定が終了したが、2020年度前期は新型コロナウィルス対策の遠隔授業などでメンバー全員が忙殺されしまい、研究の再開が後期にずれ込むことになった。このため成果は予定通り得られているものの当初計画よりも約1年の遅れが生じている。 2021年度は解析結果を論文にまとめて成果発表をするとともに、当初計画していた他の研究も進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
揺れの記憶をもつ石松子ペーストについては、乾燥破壊の実験や、μCTで得られたデータの画像解析が概ねまとまり論文作成に向けて最終段階にある。ただ実験データの補足としてμCTのサンプル作成と同じ条件での降伏応力のレオメーター測定をしたいと考えているが、緊急事態宣言等による出張の禁止が続いているため、通常のように研究代表者の狐崎が測定装置を所有する中原研究室に行くことができていない。状況が改善されたら測定を行う予定であるが、代替の測定をする場合、購入した恒温水循環装置を利用する。 2021年度は計画の最終年度であるため年度前半での論文の作成・投稿を目標とし、後半は塑性を伴う亀裂進展についての研究を進める予定である。 なお国際会議での成果発表を予定していたが現状では海外出張は困難であるため、出張費として計上していた予算を新しい測定や実験のための準備に利用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に研究分担者の成果発表や研究打ち合わせのための出張費として支出する予定であったが、2020年春から新型コロナウィルス感染症対策のために出張が中止になっているため未使用となっている分である。2021年度は最終年度であるため、状況が改善されなければ繰り越し分は当該研究分担者の研究に必要な消耗品等で利用する予定である。この他に研究代表者の直接経費の未使用額が4万円程度あるが、これは次年度経費と併せて実験等で必要な物品の購入にあてる計画である。
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