研究課題/領域番号 |
18K03563
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
名嘉山 祥也 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10422982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電気二重層 |
研究実績の概要 |
コロイド粒子が高分子水溶液に分散した懸濁液のレオロジーについて検討した。懸濁液の流れについての理論は、従来単純液体を想定したニュートン流体を分散媒とした系の研究が中心であった。一方で、界面動電現象が見られる分散系では、分散媒がニュートン流体である場合のみならず、高分子溶液のような粘弾性流体である場合も多い。粘弾性流体に微粒子が分散した系が、せん断流れにおいてどのような応答を示すのかについて検討した。過去の実験研究において、粘弾性流体中の分散系では、粒子濃度が希薄な場合においても、せん断速度とともに粘度が増加するシアシックニングが見られることが報告されている。この現象は、ニュートン流体分散媒の場合のシアシックニングは非常に粒子が高濃度でしかみられないことと対比される。微粒子と粘弾性分散媒の相互作用を明らかにするために著者らの開発した数値計算法である Smoothed Profile 法を、粘弾性分散媒に拡張した。流体の弾性の効果を明らかにするために、粘度はせん断速度に依らないが弾性を示すOldroyd-Bモデルを用いて解析をおこなった。これは実験的には高分子溶液に対応する。希薄粒子濃度において、分散媒の緩和レートより速いせん断速度ではシアシックニングが生じることが再現された。さらに、開発した方法によって、過去の実験データを定量的に再現した。この現象は分散媒における弾性応力の発達に起因しており、粒子周りの法線応力差によることを明らかにした。この現象は、高分子の配向と伸長によってせつめいされるが、高分子の伸長は弾性の強化に対して非単調に変化することも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の一部を行い、査読あり研究論文3報を学術誌に発表した。また9件の学会発表を行い、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
界面動電現象である非線型電気泳動について、塩添加の効果について明らかにする。対イオンと共イオンは反対符号であるため、外場に対する応答が異なる。このことは外場が強くなるほど顕著になる。また、溶媒とイオンの相互作用による溶媒和を考慮して、微粒子の電気泳動に与える効果を明らかにする。高電解質濃度における電気浸透流について検討する。高電解質濃度における電気二重層の遮蔽長では、空間的な広がりとともに電場と流れの結合を担うイオンの量も増えるため、駆動効率の増大が期待される。電気二重層の構造とスケール変化による電気浸透流の質的な変化の効果は、とくにナノ流路において重要となる。本課題では、高電解質濃度における流れの理解に立脚して電気浸透流・流動電流を高効率にする電解質濃度と流路サイズの設計の物理的な原理を提案する。
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