研究課題/領域番号 |
18K03569
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
細田 真妃子 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (40366406)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粘性 / 遠隔計測 / 粘度測定 |
研究実績の概要 |
研究では独自に開発した粘性測定法である電磁駆動回転(Electro Magnetically Spinning: 以下EMS)システムを、通常の粘度測定手法を用いることができない特殊環境下にある超臨界状態の流体の粘性計測に適用する。超臨界状態の流体、例えば超臨界二酸化炭素はすでに物質の高効率の抽出技術などに応用されているが、その状態のモニタリング技術、特にレオロジー計測技術は現在も限定的である。こ申請者を含む研究グループは最近、磁気浮上型EMSシステムを開発し、水の粘性の1/1000程度の気体の粘性を精度よく計測することに成功した。本研究ではこれを超臨界状態の流体に適用し、超臨界状態にある物質のレオロジー特性を明らかにするとともに、将来的に超臨界状態を利用した工学プロセスに提供するため物質の抽出状態のモニタリングなどの応用を行う。本年度は試料の浮力によってサンプル槽の上部で安定に回転する新しい粘性プローブを開発してその性能を評価した。これまでの研究により化学反応などが試料槽内で進行するのに伴い、生成した成分が沈降して粘性プローブの回転中心付近に吸着し、回転を阻害するという現象が生じた。これを解決するために浮力によって液体試料中に保持され、回転中心を鉛直上方に有するプローブを考案した。回転中心と接する容器の上方は不活性ガス溜となっていて回転中心が試料と直接に接触することなく、安定した回転が保証される。新しく開発したプローブ並びに試料セルを用いて、しょ糖の結晶が純水中に溶解する様子を300時間以上に渡って連続モニタリングし、その間の粘性の増加からしょ糖の濃度変化を観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料中の反応に伴う沈殿などの現象に対応し、長時間に渡って安定した動作が可能な回転プローブを新たに考案・作製し、その能力を検証することができた。これにこれまでの研究で開発した回転駆動トルクの遠隔到達システムを併用することで、さまざまな環境におけるレオロジーの連続計測が可能になる。以上の通り本研究は当初の計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究ではまず工業的に溶媒としての利用が期待される二酸化炭素を想定し、臨界条件下での回転子の耐環境性の検証を進める。回転子の材質としてチタンを採用し、マイクロ放電加工により必要な部材の作製を行う。数100時間から数か月にわたる貯蔵・熟成などの工業プロセスに対応可能な測定システムは本年度の研究により完成が認められたので、さらに連続的にレオロジー計測を行えるソフトウエアなどの整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画を進める過程で、試料の改質に伴う成分の吸着により回転子の円滑な動作が阻害されない新しい形状の回転子の着想を得た。これにより、測定の支障となる接触部における摩擦トルクに対する、試料の影響を排除することができる。実際の検証によりこれまで測定に支障が生じるおそれのあったコロイド系などにも問題なく適用することが確認できた。さらに数100時間を超える連続測定試験により、その動作の安定性を検証することができた。この回転子は塗料や食品など不均一な液体を扱う分野においても幅広い活用が期待できる。今後はさらに反応性の高い臨海応対の資料中で動作可能なプローブの材料を選定してその対環境性を検証するために消耗品材料の購入に予算を使用し、実際にこの回転子を用いての物性の連続測定を今後に行うこととした。今後の計画では将来的に超臨界状態の利用が工業的に強く期待されている二酸化炭素を念頭に、耐薬品性・耐高温高圧の回転子の設計を進める。また高圧容器内部の回転子の運動を、光学的観察以外の手法で行う着想を得たため、これを次年度において実証する。
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