研究課題/領域番号 |
18K03572
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
下川 倫子 福岡工業大学, 工学部, 助教 (80554419)
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研究分担者 |
坂口 英継 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90192591)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 界面不安定性 / 実効粘度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、渦輪の多角形への変形メカニズムの解明を通して粘性流体における非平衡界面の変形現象を理解することである。粘性流体中を沈降する液滴は沈降過程で渦輪に変形した後、自発的にいくつかの液滴に分裂する。この分裂過程で現象が起こる領域が広がり、容器の側面や底面といった壁(境界)に近づく。液滴が境界に近づきすぎると、液滴周りの流体が境界から受ける抵抗により、液滴の変形現象は影響を受ける。そのため、現象のダイナミクスを取り扱う上で、境界の影響を無視できる境界と液滴の間の距離を明らかにすることが重要となる。そこで、瞬間的な微小外力を加えることで動き始めた物体が静止するまでの緩和過程の測定を行い、境界からの距離xに伴い物体が受ける抵抗がどのように変化するか、定量的に調べた。物体と境界の距離xの増加に対して、物体が受ける抵抗力は1/xに近い傾向で減少していた。以上の結果を踏まえて、液滴の分裂現象に関する測定を行っている実験セッティングにおける容器の境界と液滴の距離を比較してみたところ、容器サイズが十分に大きいことから容器境界から液滴が受ける抵抗は十分に小さく、液滴の分裂ダイナミクスの解釈において境界の影響を無視できることが考えられる。また、本実験において、境界と物体間に働く抵抗力の影響は実効粘度の上昇としてみなすことができることが実験と現象論的モデルの比較からわかった。本研究については、国際学会や国内の学会で発表し、成果発表のため学術論文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は静止する容器の壁(境界)が液滴の界面不安定性に与える影響を定量的に評価した。実験での測定から、液滴の分裂現象に関し、今まで我々が行ってきた実験セッティングにおいて、容器サイズが十分に大きいことから容器の境界が液滴の不安定性のダイナミクスに与える影響はほとんどないことが分かった。さらに容器の壁の存在により液滴が受ける抵抗力については、現象論的モデルを用い、物理的取り扱いを提案した。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
いままでの研究成果のまとめと、対外的な発表を実施することとしていたため、これまでの成果について可能な限り広く発表していくことを実施する。新型ウィルスの影響で海外渡航が困難な場合があるが、その場合はオンラインなどを用いて国内外の学会等で広く成果発表をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は、コロナウイルスの影響により、当初、計画していた国際会議での発表ができなかったことによるものであり、研究計画の未達による物ではない。
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