研究課題/領域番号 |
18K03573
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研究機関 | 科学教育総合研究所株式会社(研究・開発部) |
研究代表者 |
小田垣 孝 科学教育総合研究所株式会社(研究・開発部), その他部局等, 主任研究員 (90214147)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エージング / 自由エネルギーランドスケープ / 非平衡系 / ガラス転移 / 過冷却液体 / 結晶化時間 / 密度汎関数理論 |
研究実績の概要 |
自由エネルギーランドスケープ(FEL)理論は、ガラス転移・過冷却液体を含む非平衡系を統一的に記述する理論であり、FEL理論に基づいて様々な現象を理解すると共に、FELの特徴を明らかにすることが本研究課題の目的である。FELは温度に依存するので、温度を変化させたときに示される非平衡系の振る舞いから、非平衡系のFELの構造の特徴が求められる事を明らかにした。まず、二準位系およびランダウ型の自由エネルギーで表わされる系について、温度をジャンプさせた場合と温度に周期的な変動を与えたときに見られる緩和関数および感受率の振る舞いからFELの緩和時間が求められることを明らかにした。 吉留東北大学助教の協力を得て、密度汎関数理論に基づくFELの構築法を用いて、現実系の結晶化時間の温度依存性が求められることを示した。 結果を、東京大学物性研究所短期研究会(東京大学、5月10日~5月12日)、科学学研究費討論会(京都工芸繊維大学、2018年8月4日)、日本物理学会2018年秋季大会(同志社大学、2018年9月9-12日)およびXV International Workshop on Complex Systems(Andalo, Italy, 2019年3月15-20日)で発表した。 また、研究成果を一般市民に説明するために、科学を語る会 (九州大学西新プラザ, 2018年11月10日)において講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つは、自由エネルギーランドスケープ(FEL)の温度変調に対する応答がどのように物理量に反映され、観測できるかを明らかにすることである。平成30年度は、(1)二準位系とより一般的な自由エネルギーのランダウ型自由エネルギーで記述される系について、温度変調の効果を明らかにすること、(2)非平衡系で観測される種々物理量の観測時間依存性(エージング効果)を理論的に説明すること、(3)過冷却液体の結晶化過程の温度依存性を現実系で明らかにすること にテーマを分けて、研究を進めた。 (1)に関しては、二準位系で示された温度変調応答が、より一般的なランダウ型自由エネルギーをもつ系においても観測できることを示し、結果を学会で発表するとともに論文を執筆し、投稿した。 (2)非平衡系の物理量が観測時間に依存するエージング効果には二つの寄与(分布関数の緩和とFELの緩和)があることを示し、それらの区別の仕方及びデータの解析の仕方を発見した。 (3)密度汎関数理論に基づいたFELの構築法を用いて、現実系のFELを求め、急冷したときの結晶化過程を解析する方法を確立した。 また、非平衡系における転移現象である雷などの放電現象に関する論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、当初の計画通りほぼ順調に経過しており、これまでの研究を継続・発展させる。 (1)エージングに関する計算をより正確に行い、緩和関数、感受率の他中間散乱関数のエージングを求め、そのガラス転移との関係を明らかにする。 (2)過冷却液体の結晶化時間の温度依存性について、現実系の計算を行い、実験あるいはシミュレーションの結果と比較し、結晶化過程におけるFELの特徴を明らかにする。 (3)FEL描像に基づいて構造エントロピーを考察し、協調緩和領域の概念および緩和のAdam-Gibbs理論の基礎付けを行う。 (4)FEL描像に基づくガラス転移の統一的理解を目指して、繰り込み群の方法についての基礎的な調査を行う。 (5)新たに浮上してきた問題(1)アミロイド病の発生・伝播をFEL描像に基づいて理解すること、(2)液体から過冷却状態が出現するメカニズムのFEL描像による理解にむけて、情報を収集するとともに試行的研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた物品(レーザープリンター)の購入費がおよそ70%節約できたことおよび国際会議出席に関わる海外旅費の内宿泊費が節約できたことにより、次年度使用額が生じた。国際会議で発表に用いてきたノート型PCが老朽化しており、代替機を購入する。また、海外研究者との共同研究や国際会議での発表を積極的に行うことにする。
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