研究課題
等方なマクスウェル分布からずれた非等方な電子の速度分布が関連するプラズマ現象が、近年、宇宙プラズマから産業応用プラズマまで数多く報告されている。これらの報告は、3次元の電子速度分布を基礎パラメータとして把握することが、プラズマ科学を発展させる鍵となることを示している。電子速度分布の計測法は、従来、静電プローブ、アクチノメトリー、トムソン散乱、ホイッスラー波の吸収、制動X線や電子サイクロトロン放射等が開発されてきた。しかし、これらの方法では、速度分布の非等方性の情報まで得ることは容易ではなく、また、接触計測の必要性やプラズマへの擾乱、レーザーや波動の入射・出射ポートの確保、計測可能なエネルギーや密度の制限といった課題がある。そこで本研究では、原子から放射される発光線の偏光を利用し、宇宙から実験室までの幅広いパラメータのプラズマに適用可能な手法を開発することを目的とする。最終年度である本年度は、宇宙、核融合、産業応用等の幅広いプラズマへ本手法を適用できるようにするために、ヘリウム原子以外の元素に対して偏光が観測できるかを実験的に調べた。高いS/Nでの発光強度計測が可能な水素原子バルマーα線を対象とし、ECR放電装置で圧力5-270 mPaの範囲で生成した水素プラズマに対して、ECR面に接する1視線を用いて偏光度と偏光方向を計測した。その結果、全ての圧力条件で直線偏光が観測され、偏光方向はECR面における磁場方向と垂直に近い方向であった。偏光度は、圧力50 mPa以上では約1%であり、圧力50 mPa以下では圧力の減少とともに増加し、最大で約1.5%であった。ECR面付近で生じた電子速度分布の非等方性により偏光が生じている可能性が考えられる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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