研究実績の概要 |
今年度は液中レーザー溶融法を用いたサブミクロン球状パラジウム(Pd)粒子の水素吸収・脱離の温度依存性を調べ、水素化物生成のエンタルピーなどを評価した。原料と球状粒子の125℃における圧力-組成等温線(吸収時)を測定した結果、球状粒子のプラトー圧の大幅な減少が見られた。これはレーザー照射により結晶構造が変化したためであると考えられる。しかしプラトー端のH/Pdの比較から、球状粒子の吸収量が減少したことが確認できた。得られたvan’t Hoff プロットの傾きから原料と球状粒子それぞれの水素化物生成のエンタルピーとして29.7, 12.7 kJ/molを得た。以上より液中レーザー溶融法によってPdの水素吸蔵能を向上できる可能性が示唆された。 本研究では将来の核融合実用炉での使用を指向した新水素同位体吸蔵体の開発を目的に、液中レーザー溶融法を用いたサブミクロンPd球状粒子を作成し、その水素吸収脱離特性を評価した。期間全体を通じて得た成果として、作成した当該球状Pd粒子に新たな水素捕捉サイトが形成したこと、室温における1気圧程度までの水素吸収・脱離実験では水溶媒中で作成した当該球状Pd粒子の大気圧での水素吸収量がエタノール溶媒中で作成したものより多くなったこと、30サイクルの室温の水素吸収・脱離でも水素吸収・脱離特性が変化しないこと、水素化物生成のエンタルピーは原料に比べ当該球状Pd粒子の方が小さくなり、液中レーザー溶融法によりPdの水素吸蔵能を向上できる可能性が示唆されたこと、である。 以上本研究により、液中レーザー溶融法にて作成したサブミクロン球状Pdは、市販のPd原料より優れた水素吸蔵能を持つこと、作成条件の最適化でさらなる吸蔵能向上が期待できることがわかった。核融合実用炉用水素同位体吸蔵体の開発に有益な知見が得られたと考えている。
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